不定胚形成を目的としたニンジン細胞懸濁培養において, 懸濁液の巨視的画像から細胞の増殖速度を非破壊で推定することを試みた.培養器に入ったままの状態で撮影された懸濁液のRBGカラー画像のB成分から抽出した特徴量と, 懸濁液の圧縮細胞量 (PCV) との対応を図った.適当なしきい値で抽出した細胞塊に相当する部分のピクセルの総数とPCVとの間に比較的高い相関が認められたが, その関係は抽出のためのしきい値に大きく影響を受けた.一方, 懸濁液全体のBの強度の総和は, しきい値による細胞塊の抽出工程を必要とせず, 懸濁液のPCVと相関を示した.さらに, このシステムを用いて, ニンジン培養細胞の不定胚形成能力の低下に伴って比増殖速度が増加する現象を観察することができた.このことから, 不定胚形成に望ましい増殖特性を持つ細胞懸濁液の選別に, このシステムが有効であることが示唆された.