2002 年 40 巻 4 号 p. 365-374
本研究は, 葉の内外部形態が純光合成速度と水利用効率に及ぼす影響を明らかにするため, 気孔開度の著しく異なる葉面飽差下で葉のガス交換速度を測定し, 検討を加えたものである.光合成型を無視した場合, 気孔密度と気孔コンダクタンスとの間に有意な相関が認められ, 気孔数が増大すると蒸散速度が増大することが示された.同じ光合成型植物内では, 気孔密度と気孔コンダクタンスおよび蒸散速度との間に有意な相関は認められなかった.気孔密度と純光合成速度との間には負の相関があり, 外囲空気から気孔間隙までのCO2の拡散には気孔形態の影響は小さいか無く, むしろ葉肉細胞の光合成特性に関連する生化学の違いが重要と考えられた.維管束間距離が増大すると純光合成速度と水利用効率は低下した.これらより, C4植物ではクランツ細胞内のCO2濃縮機構に加え, とくに維管束間距離が短いC4-MS型は, 維管束鞘細胞から師部への光合成産物の迅速な移動が光合成速度と水利用効率を高く維持するものと結論された.