生物環境調節
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ファイトトロン自然光ガラス室における環境条件とダイズ生育の均一性
山本 正桜谷 哲夫阿部 博史
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1971 年 9 巻 1-2 号 p. 22-30

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抄録

ファイトトロン自然光室の環境要素の均一性をみるために, 9台のポット台に72個のポットをほぼ均等に配置し, ダイズを栽培してその生育状況をみるとともに, 環境要素として, 風速, 気温, 波長別目射量の分布を測定し, 生育との関係を解析した.
(1) 自然光室内の気温は, 南側と壁側とでは壁側ほど高く, 南側と壁側との温度差は群落内で約1.5℃であった.このことは壁側での顕熱伝達量が南側よりも優勢であるためと思われる.風速分布は70cmの高さで20~40cm/secであるが, 一部では40cm/secを越える場所もあった.一方, 自然光室の空室の状態での温度分布および風速分布を作物が入っている場合と比較してみると, 温度分布では空室の場合, 台間の高い傾向は消失するが, 壁側が高く南側が低い傾向は変わらなかった.風速分布では作物が入っている状態とほとんど同じ傾向であった.
(2) 作物の形態については, 茎長および生体重は南側で優勢であった.またポット台の内側に面している個体は外側に面している個体よりも大きい傾向があった.開花までの日数については, 南側がほとんど34日であるのに対し壁側は32~34日の個体が不規則に分布した.環境要素の分布と生育とを対応づけてみると, 茎長および生体重と気温とは負の相関があり, また風速が大きい場所では茎長は短くなる傾向がみられた.
(3) 自然光室で作物を栽培した場合は, 構造上およびポット台やポットの配置によって環境条件にむらが生じ作物の生育も均一性を欠くことになるので, 要求される試験の精度によってはポットの回転や移動を行なって, 変異の幅をさげる必要があろう.
終りに測定技術について助言をいただいた千葉大学農学部羽生寿郎助教授, ならびに統計分析について指導をいただいた北海道農業試験場小餅昭二博士に深謝の意を表します.

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