応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
Print ISSN : 1344-3755
ISSN-L : 1344-3755
原著論文
生息場評価手法を用いたホタル水路の建設
関根 雅彦後藤 益滋伊藤 信行田中 浩二金尾 充浩井上 倫道
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 10 巻 2 号 p. 103-116

詳細
抄録
ゲンジボタルの周辺環境に対する生息場適性基準,ゲンジボタルとカワニナの流水環境に対する生息場適性基準を作成し,PHABSIMの手法を援用して,椹野川のゲンジボタルの生息適地を探索した.その結果,ゲンジボタル生息適地としては椹野川本川中流域の生息条件はあまり良好ではないことが明らかとなった.また,選定されたホタル水路建設予定地については,巨視的には良好な周辺環境であるとは言えないこと,微視的にはゲンジボタルの生息が可能な要素がほぼ揃っており,ゲンジボタル生息の可能性があることを指摘した.次に,PHABSIMを用いてホタル水路建設予定地の流水環境評価を行い,ホタル水路建設予定地は現況のままではゲンジボタルとカワニナの流水環境としては良好でないことを指摘し,水路のわずかな手直しによって比較的良好な流水環境が実現できることを示した.また適切な維持流量として0.06m3/secをあげ,河床へのシルト堆積や藻類繁茂が見られる場合には0.2m3/sec程度まで一時的に流量を高めればよいことを指摘した.さらに,竣工後のホタル幼虫の上陸調査により,PHABSIMにおいて生息場としての評価が高い区間で多くの幼虫上陸が見られることを示した.
著者関連情報
© 2007 応用生態工学会
次の記事
feedback
Top