応用生態工学
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原著論文
ダム湖を利用するホシハジロの個体数と浅水域面積
森 貴久川西 誠一Navjot S. SODHI山岸 哲
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2007 年 10 巻 2 号 p. 185-190

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抄録
ダム湖はカモ類の越冬地として利用される水域であるが, 実際にダム湖を利用しているカモ類はマガモやカルガモなど休息に利用するカモ類がほとんどで, ホシハジロのような底採餌を行なうカモ類はあまり利用していない. これは, 一般的にダム湖には底採餌を行なうカモに適当な浅い水域が少ないことによると考えられている. そのなかで東北地方にはホシハジロが多数集まるダム湖が数ヵ所存在する. これらのダム湖は河成段丘に建造されていて, 浅い水域を広く提供できる. ダム湖におけるホシハジロの個体数が浅い水域の面積の関係について, 東北地方の9ヵ所のダム湖を対象に検証した. ホシハジロの個体数密度はダム湖の浅い (水深5m以下) 水域の面積と正の相関を示した. また, 個体数密度の年度間の変動は, 浅い水域の面積の変動と正の相関を示した. マガモ, カルガモ, コガモの個体数密度についてはこのような相関はみられなかった. さらに, 湯田ダムでは, 貯水位が低く段丘が露出している年にはホシハジロの個体数密度が激減した. これらのことは, ホシハジロの個体数密度を決定する要因としてダム湖のもつ浅い領域の面積が重要であること, 個体数密度と浅い領域の面積が関係する理由としてカモの採餌形態が関係していること, を示している.
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© 2007 応用生態工学会
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