抄録
日本の純自然海岸の大部分を占める温帯岩礁域における環境構造と動物群集の関連性についての知見は不足している.本研究では北部九州岩礁域における魚類群集をモデルにして,磯の環境構造と魚類群集の関連性について明らかにした.その結果,調査地は4つの環境構造クラスターに区分されること,それぞれのクラスターに標徴種が見られること,魚類群集も4クラスターに区分され,環境構造クラスターと対応関係が見られること,幾つかの環境構造が魚類群集に影響を与えていることが解明された.そして,それらの結果から多様な群集の維持には環境が多様であること,褐藻類が繁茂すること,未成魚の生育場となり得る浅場を含むことが重要であることなどが明らかとなった.