応用生態工学
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原著論文
試験湛水時に冠水したフクジュソウ群落の12年間の変遷
浅見 和弘沖津 二朗齋藤 大影山 奈美子
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2009 年 12 巻 1 号 p. 13-20

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抄録
三春ダムの試験湛水前に,サーチャージ水位~常時満水位の範囲で,フクジュソウの群生地を確認した.フクジュソウは,確認当時,「我が国における保護上重要な植物種の現状」((財)日本自然保護協会 (1989) の危急種に該当し,ダムの本格運用前の試験湛水によって,生育個体のほとんどが湛水の影響を受けることが明らかであった.試験的な意味合いから,常時満水位~サーチャージ水位付近にかけてベルト上にコドラートを設置し,コドラート内の個体を残存させ,湛水前後の変遷を12年間,追跡した.試験湛水前に全体で106個体あった開花個体のうち,21日以上冠水した範囲では翌年個体を確認できなかった.それ未満の冠水日数では生き残った個体もあるが,冠水の翌春は開花しなかった.試験湛水直後,開花個体は湛水区域外の3個体のみであったが,その後は回復し,試験湛水から10年後の2007年には28個体,11年後には46個体と増加傾向にある.生育適地は,ダム運用後一部は貯水池に,一部はアズマネザサなどの繁茂により減少したが,当初の約70%は残存しており,今後も個体数は増加すると考えられる.
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© 2009 応用生態工学会
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