2005年から2007年にかけて,岐阜県の神通川水系蒲田川の砂防堰堤下流に造成されたイワナ,ヤマメの人工産卵河川において,両種の産卵と当歳魚の生態を調査した.2005年11月に8ヵ所の人工産卵場のうち4ヵ所で,2006年同月に15ヵ所の人工産卵場うち8カ所で多数のイワナの産卵がそれぞれ確認された.両年ともにヤマメの産卵は確認されなかった.2005年のイワナの産着卵数は2,503粒,卵の発眼率は90.0%であった.イワナ当歳魚は4月に産卵床付近で多く観察され,その後経時的に人工産卵河川全体に分散した.この傾向は2006年に強かった.イワナ当歳魚の10月における水表面積1m
2当たりの密度と現存量は,2005年級群では0.29個体と2.32g,2006年級群では0.75個体と4.73gであった.10月の尾叉長と体重の平均値は,2005年級群では86.0mmと8.00g,2006年級群では80.2mmと6.31gであった.2005年級群の卵から当歳10月までの生残率は3.2%であった.これらの結果から,人工産卵河川の造成はイワナの増殖に有効であると考えられた.
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