応用生態工学
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事例研究
標津川の再蛇行化が一次生産過程に及ぼす影響の評価
萱場 祐一野崎 健太郎河口 洋一皆川 朋子
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2009 年 12 巻 1 号 p. 37-47

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抄録

本研究では河川における平面形状の違いが物質・エネルギーの動態に及ぼす影響を把握することを目的として,標津川の再蛇行化を取り上げ,一次生産速度に及ぼす影響を直線区間と蛇行区間の比較から明らかにし,その要因を分析した.観測結果から,蛇行区間における一次生産速度は直線区間と比較して大きかった.河床付着物中のChl.a が蛇行区間で有意に大きかったことから,両区間における一次生産速度の差は蛇行区間における高い底生藻現存量に起因していると考えられた.また,河床表層を占める河床材粒の粒径は,蛇行区間では瀬・淵構造の発達に伴い相対的に大きく,砂の面積占有率は直線区間で大きかった.更に,蛇行区間では湾曲の影響により,砂は平常時においても掃流状態で流下していたのに対し,蛇行区間では掃流砂が横断方向に偏った分布を有し,横断面の一部でしか確認できなかった.底生藻の現存量が直線区間で相対的に小さく,一次生産速度が減少したのも,このような河床環境の違いを反映したものと考えられた.

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© 2009 応用生態工学会
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