応用生態工学
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原著論文
チドリ3種の共存を可能にしている河川物理, 洪水にともなう砂礫の分級
山岸 哲松原 始平松 山治鷲見 哲也江崎 保男
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2009 年 12 巻 2 号 p. 79-85

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抄録
2000年から2006年の3月から7月にかけて,京都府南部の木津川において,チドリ類3種の営巣環境選択に関する研究を行ない,河川物理が3種の共存に与える影響を論じた.木津川ではコチドリ,イカルチドリ,シロチドリの3種が同一砂州上で繁殖している.現地調査においては営巣中のチドリを発見し,その営巣環境を,基質砂礫サイズの3区分をもちいて評価した.その結果,主に海岸の砂州干潟に営巣するシロチドリは,粒径の小さな基質に営巣する頻度が有意に高かった.また,コチドリとイカルチドリは比較的幅広い基質に営巣し,この2種間では有意差が見出せなかったものの,イカルチドリはコチドリよりも大きな礫を選好する傾向があった.調査地砂州の砂礫分布図を作成したところ,大粒径土砂と小粒径土砂の分布が,上下流のマクロスケールで明確に異なっていたのみならず,ミクロスケールでは小粒径土砂の砂礫内に大粒径土砂の小パッチが点在していた.これらの分布パターンは,ともに洪水によって形成されると考えられるので,チドリ類の同一砂州上での共存には定期的な出水が不可欠であると考えられる.
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© 2009 応用生態工学会
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