応用生態工学
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総説
北海道自然堤防帯における河畔林の現状と管理方針の提案
傳甫 潤也岡村 俊邦堀岡 和晃田代 隆志
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2011 年 14 巻 1 号 p. 45-62

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抄録
本論では,人為改変前後における河道の地形学的特性と河畔林動態との関係から,北海道自然堤防帯における河畔林の現状と課題について考察し,その管理方針を提案した.河畔林は,流水の攪乱体制に応じたダイナミクスが特徴である.したがって,河畔林の配列は,網状河道,蛇行河道などの縦断的な河道の地形学的特性,横断的な微地形に応じたものとなる.改変前において,流路変動の緩慢な蛇行河道では,流路変動の著しい網状河道に比べ,河畔林の破壊の間隔は長く,遷移の中間種,後期種が優占する.また,流路の側方移動,地盤高の増加に伴い,遷移段階の異なる河畔林が河道に沿って帯状に分布すると考えられた.新たな堆積地への先駆種の定着は,土砂捕捉による地盤高の増加,更新サイトの形成,保護などの促進効果をもつ.その後,環境条件の変化に応じた次のステージの稚樹が林冠へと到達する.一方,改変後では,横断的な高低差にもとづく冠水状況の違いはあるが,次のステージの稚樹群が不在のヤナギ林が広範囲に分布している.これらは,自然攪乱にくわえ,人為攪乱 (風倒木撤去,河川整備など) により,破壊と再生を頻発し,かつ周辺からの中間種,後期種の種子供給が少ないことから,遷移し難いと考えられた.したがって,自然堤防帯では,流水の攪乱体制に応じた配列の失われた河畔林となっていることを指摘した.これは,氾濫原や蛇行河道の復元を実施した場合でも,遷移段階の異なる河畔林の配列が再生され難いことを示唆する.また,河畔林の遷移は,森林性の林床植生要素,洪水透過能力の改善をもたらす可能性が示唆された.以上から,流水の攪乱体制に応じた河畔林の配列が再生されるよう,遷移可能な立地に分布している先駆林に対して,中間種,後期種の稚樹群を形成させる管理,更に低水路拡幅による河道の側方移動を復元させる管理を提案した.
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© 2011 応用生態工学会
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