・アサリの生息場所として必要な条件を明らかにするため,本研究は,干潟に生息するアサリの空間分布を明らかにし,アサリの空間分布の形成に関与する可能性のある物理・生物環境因子を,空間統計解析を用いて抽出することを目的とした.
・2008 年 9 月中旬に三重県松名瀬干潟において,岸-沖方向に細長い 57 m× 264 m の調査区内に 30 点設け,地形測量と,干潟表面から深さ 5 cm までの生物および堆積物のサンプリングを行った.
・26 科 33 属 34 種の大型底生動物が確認され,アサリの密度は多毛類 (Ceratonereis 属) に次いで優占し,湿重量では最優占した.
・殻長 20 mm 未満のアサリは,最干潮時干潟平均汀線から高さ + 0.23 m から + 0.83 m の範囲に分布したが,高密度域は + 0.23 m から + 0.60 cm の範囲だった.
・高密度域の岸側境界付近にはスワッシュバーが存在し,地盤高と関わる干潟底面への波当たりや高温条件などがアサリ密度の制限要因に関わっていると推察された.
・アサリの生息場所は間接的に地盤高で決まると考えられたが,その範囲は狭く,適した地盤高の干潟の消失は,アサリ資源の低下につながると考えられた.
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