応用生態工学
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原著論文
愛媛県加茂川・中山川におけるヨシノボリ類個体群のダム隔離による遺伝的影響
高木 基裕関家 一平柴川 涼平清水 孝昭川西 亮太井上 幹生
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2012 年 15 巻 2 号 p. 161-170

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抄録
河川人工構造物は,水生生物個体群の分断化を引き起こす.本研究では,貯水ダムが設置されている愛媛県の加茂川と中山川においてヨシノボリ類の遺伝的集団構造の解析および回遊履歴の判定を行い,ダムによる分断の程度を評価することを目的とした.加茂川および中山川の 6 地点からシマヨシノボリ,オオヨシノボリ,トウヨシノボリ,カワヨシノボリを 20~39 個体採集し,各個体の胸鰭から DNA を抽出した.マイクロサテライト領域の増幅には Rhi-5*, -7*, -11* の3 種のマーカー座を用い,アリルサイズを決定し遺伝的解析に用いた.耳石による回遊履歴の判定は加茂川の黒瀬ダム上流域の中奥,黒瀬ダム下流域の大久保,中山川下流域の大頭堰からそれぞれシマヨシノボリを 1 から 2 個体の耳石を採取し,Sr/Ca 濃度を測定した.遺伝的多様性を示すヘテロ接合体率 (期待値) の平均値は,シマヨシノボリ (0. 900~0. 921) で最も高く,続いてオオヨシノボリ (0. 869, 0. 889),トウヨシノボリ (0. 7779 の順となり,カワヨシノボリ (0. 192~0. 271) で最も低く,種により遺伝的多様度に違いが見られた.各個体群間の遺伝的分化を示す異質性検定では,種間で有意差が見られた.耳石 Sr/Ca 解析により,加茂川の黒瀬ダム上流のシマヨシノボリ個体群の陸封化が確認されたが,遺伝的異質性検定では,黒瀬ダムの上流域と下流域のシマヨシノボリ個体群において有意な差は見られなかった.また,中山川のカワヨシノボリでも中山川逆調整池堰堤の上流域と下流域の個体群において有意な差が見られなかった.
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© 2012 応用生態工学会
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