日本組織適合性学会誌
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総説
MHCとゲノムパラロジー
笠原 正典
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2006 年 13 巻 1 号 p. 9-17

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抄録

ヒトのゲノムを詳細に観察すると, ブロック重複によって形成されたと考えられる遺伝子の集団(クラスター)が2-4セット, 典型的には4セット, 異なった染色体上に存在する現象が認められる. この現象は, ゲノムパラロジーとして知られている. 過去10年にわたる研究により, 1)ヒトの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)であるHLA領域はゲノムパラロジーを示す典型的な遺伝領域であること, 2)HLA領域とブロック重複によって分岐したと考えられる領域は, 主として第1, 9, 19染色体上の限局された部位に存在すること, 3)ブロック重複は有顎脊椎動物の共通祖先が出現するまでに, 2回起きたと推定されること, 4)このブロック重複はゲノム全体の重複(ゲノム重複)の一環として起きた可能性が高いこと, などが明らかになってきた. ここでは, この話題を中心にして, MHCというゲノム領域がどのようにして創成されたのかについて述べる.

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© 2006 日本組織適合性学会
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