抄録
島根県に位置する宍道湖を対象に,1947 年 10 月に撮影された米軍空中写真を用いて,沈水植物を含む水草の分布範囲を復元した.沈水植物の判読は,「水域や砂地より暗く,輪郭部が丸みをおび,波の下に存在する」という基準に従って行った.写真判読の結果,沈水植物以外の水草(抽水植物・浮葉植物)は湖内では確認されなかった.現在の宍道湖では自然再生としてヨシが植栽されているが,抽水植物が確認されたのは流入河川の一部に限られた.浮葉植物,もしくは水面上まで葉を伸ばす沈水植物は,全写真で確認できなかった.沈水植物の面積は約 3 km2 と計算された.また当時 3 m とされていた透明度は,本研究の結果では 4 m 以上と判断された.現在は泥質である水深 4 m の湖底の一部は,光を強く反射し白くなっていることや,一部の写真で白い部分に砂漣が認められたことから,砂質であったと推定された.沈水植物は,宍道湖北岸中央部で最深となる水深 4 m まで繁茂していた.宍道湖では近年,葉を水面まで展開するタイプの沈水植物が侵入している.本研究の結果から,これらは過去に優占していた種・タイプではないことが確認された.