抄録
北海道の石狩湾沿岸の 7 河川で,サクラマス幼魚,水生藻類および陸上植物の炭素・窒素安定同位体比と河畔や流域の土地利用との関連性を調べた.土地利用割合を主成分分析で解析したところ,第 1 主成分の寄与率は 47~57%,因子負荷量は人工林率と農地率の正の値が高いとともに,天然林率と自然草原率の負の値も高かった.水生藻類とサクラマス幼魚の窒素安定同位体比は,主成分分析の第 1 主成分得点と正の相関を示した.この結果は,流域や河畔に農地や人工林の多い河川ほど河川生態系全体の窒素安定同位体比が高くなることを示唆し,これらの窒素安定同位体比は河川生態系に及ぼす人為的影響の診断指標として活用できるものと考えられた.