応用生態工学
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短報
自然環境分野における UAV(ドローン)を用いた簡易 3 次元計測技術の適用可能性と課題の検討
上野 裕介
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2016 年 19 巻 1 号 p. 91-100

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抄録

近年の急速な小型 UAV の進歩と普及は,実務や研究の現場を変えつつある.そこで本報文では,実務や研究の現場で画像解析の専門家以外が使用する場面を想定し,UAV を活用した空撮や測量分野の最新技術について,出来るだけ簡便な方法で,どの程度の精度に到達できるかどうかを検証するとともに,利用上の課題について考察した.具体例として,河川環境分野での活用を想定し,野外に設置した五ヶ瀬川水系の 1/70 河川模型(模型幅:約 10 m,流路長:約 95 m)を対象に 2 段階の地上高度(10 m と 50 m)で撮影を行い,空撮画像による河川形状把握と Structure from Motion (SfM)技術を用いた 3 次元計測の結果を速報する. まず解析作業では,高度 10 m と 50 m のそれぞれ高度で撮影した空撮画像(10 m:126 枚,50 m:24 枚)を用い,SfM により地表面データ(DSM)とオルソ画像を作成した.これらの解析には,Photoscan Pro を用いた.次に精度検証では,河川模型の 4 か所の横断面について,DSM から作成した予測横断図と実際の横断図を比較した. その結果,1)DSM の予測横断図は,模型河川の設置場所の標高は誤っていたものの,模型河川の形状はよくとらえていた.2)精度検証に使用した 4 か所の横断面のうち,特に 9.6 KP と 10.2 KP,11.0 KP では,予測横断図と実測横断図の間の誤差は,撮影高度 10 m では鉛直方向に概ね 5 cm 内,撮影高度 50 m でも 9 cm 内に収まっていた.一方で,撮影範囲の上流端に近い 11.6 KP では,誤差は最大 10~20 cm 超に及んでいた.したがって未だ技術的に検証すべき課題はあるものの,UAV による空撮と SfM 技術を組み合わせることで,従来は困難であった広域での環境計測が容易になることが示された.

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© 2016 応用生態工学会
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