応用生態工学
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総説
山地河川における step-pool 構造に関する既往の知見と河川技術への応用
厳島 怜佐藤 辰郎西田 健人真砂 祐貴坂田 知謙島谷 幸宏
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2017 年 19 巻 2 号 p. 165-180

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抄録

本稿では,山地河道において特徴的な step-pool 構造に関する既往の知見を基本的な特徴,形成・破壊過程,物理的特性及び生息場としての機能を中心に整理し,河川技術への応用可能性について示した. 第 1 に基本的な特徴について,step-pool の形成要因や発生領域を河床勾配に着目して整理した.第 2 に形成・破壊過程について形成条件を流れや土砂の状態に着目して説明し,形成・破壊流量について既往の知見を整理した.形成過程については反砂堆理論と keystone 理論があり,両者の過程が混在しており,技術的観点から両者の成因を活用した自然再生,河川改修技術の構築の必要性を指摘した.第 3 に step-pool 構造と河道特性の関係を step 間隔と河床勾配の関係を中心にまとめた.これらは気候・土砂供給条件などによって地域的な差異が大きく,普遍的な知見の構築には更なる研究が必要であることを指摘した.第 4 に step-pool に関連する物理的特性について整理を行い,現在提案されている山地河道を対象とした流速公式,抵抗則をまとめた.最後に生物生息場としての機能や自然再生の事例を紹介した.これらを通じ,step-pool 構造のエネルギー減勢及び落差緩和機能が河道改修技術として応用可能性が高いことを指摘し,今後必要となる研究を示した.

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© 2017 応用生態工学会
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