抄録
近年,アユの漁獲量の減少が進む中で,天然アユを増やす取り組みが各地で始まっている.天然アユ資源を保全するにあたっては,まず,資源量とその変動を明らかにすることが基本となる.本研究では高知県奈半利川において,2006~2012 年の 7 年間にわたって,アユ漁の解禁前の 5 月と漁期終了後の 10 月にアユの生息数を潜水目視法によって推定した.さらに,河川生活期におけるアユの減耗率を算定し,アユの生息と関わる要因との関係について検討した. 2006~2012 年のアユの生息数は 5 月時点で 14.5~154 万尾,10 月時点で 5.5~42 万尾と推定された.生息数から計算される 5 ~10 月の間の減耗率は 30~76%(平均 56%)であった.奈半利川における減耗率は他河川の事例と比較して,平均的な減耗率は低いものの年変動が大きいことが特徴的であった.減耗率は漁獲強度(漁獲人数),初期資源量,降雨強度,最大濁度とは相関が認められなかったが,比較的低レベルの濁度(20~50 mg/L)の日数割合や平均濁度と有意な相関が認められ,低レベルの濁度でもそれが長期化することでアユの減耗に関わることが示唆された.近年では河川が濁りやすくなっていることが指摘されているため,アユの生残に対する濁りの影響に関してはより一層の注意が求められる.