2020 年 22 巻 2 号 p. 117-124
生物多様性の低下が指摘されている汽水湖の鳥取県東郷池において,生育環境として重要な塩分と光環境に着目して淡水生水生植物セキショウモ Vallisneria asiatica Miki の生育ポテンシャルについて検討した.塩分では,セキショウモの生育場所について 2016 年 4 月から 1 年間観測した結果から,これまで報告されている塩分の上限値を超え,一時的に 6.98 PSU になる環境下でも生育できることが明らかとなった.また,2016 年の平均透明度から,水深 1.5 m まで生育できることが推定された.これらの条件を基に湖内の塩分分布図および湖底地形図からそれぞれ生育適地を抽出し,両条件を満たす北東部および西岸の入江が生育ポテンシャルの高いエリアとして広範囲に選定された.これらは年間を通じて塩分が高くならず,かつ,水深が浅い状態が保たれる場所として,本種の保全に向けて重要なエリアであると考えられる.