2020 年 23 巻 1 号 p. 133-143
本研究では,平成 29 年 7 月九州北部豪雨により発生した大規模出水について,地質の異なる 3 河川を対象に,河道変動にどのような違いがあるのかを調査した.結晶片岩の妙見川では,河床勾配が 15%を超える急勾配な区間から堆積が始まっており,急峻な勾配でも土砂が堆積していた.河床の縦断形は,最下流の須川第一砂防堰堤を起点に 6 m 程度上方に平行移動するように変化した.花崗閃緑岩の白木谷川では,勾配が 7%を越える区間において,風化した岩盤を洗掘するように数m から最大 10 m に達する大規模な河床低下が発生し,河道からも大量の土砂が供給されていた.供給された土砂は元々の河道部を埋没させ,幅の広い谷底に氾濫流が拡がり,大規模な川幅拡大が発生していた.それには橋脚に引っ掛かった流木も影響したものと考えられる.安山岩の本迫川では,ほとんどの区間が勾配7%を超え,上流から下流まで侵食傾向にあった.随所にフレッシュな状態の岩盤が露出しており,岩盤によって河床洗掘が制限されため,河床低下や渓岸侵食,それに伴う斜面崩壊が抑制されたものと推測された.堆積した土砂は調査河川毎に明瞭に異なっていた.比較的安定状態にある九州中北部の渓流と比較すると,特に白木谷川の河道が今後大きく変動することが予想された.