応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
Print ISSN : 1344-3755
ISSN-L : 1344-3755
事例研究
淀川におけるオオバナミズキンバイの除去手法の開発
瀬口 雄一鶴谷 未知梶 圭佑日下 慎二弓場 茂和
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 24 巻 2 号 p. 267-278

詳細
抄録

オオバナミズキンバイは,我が国における侵略的外来水生植物であり,特定外来生物に指定されている.近年,全国各地で除去作業が行われているが,根絶には至っていない.淀川下流域でも 2017 年以降,国土交通省淀川河川事務所によって毎年除去が実施されているが,根絶には至っていない.本種が根絶できない要因は,除去時に取り残しがあることと,取り残された個体の再生速度が除去作業量を上回るためと考えられる.そこで,本研究は本種の効率的な除去を目的に,覆土による生長抑制や植物体を腐敗・枯死させることや,本種が被陰に弱いという特性を利用した淀川式除去手法を開発・試行した. 本手法の特徴は継続的で段階的な除去を行いながら除去した植物体を腐敗・枯死させることにより,従来の除去作業で課題となっていた「除去した植物体の回収・揚陸作業」と「除去した植物体の処理」を行わずに除去の作業性を上げた点である.また,本手法は従来の除去作業では取り残されていた個体を精度良く除去することができるため,再繁茂しにくく,結果的には効率的な除去ができた.ただし,除去効果の持続性や適用条件の検証については,今後も継続してモニタリングする必要がある.なお,本手法により水質に顕著な悪影響は確認されなかった. 本手法は従来の除去手法で課題であった効率性や再繁茂抑制効果を改善した手法であることから,今後の市民参加による管理活動が容易になる可能性がある.淀川河川事務所では,住民等と行政の橋渡し役である河川レンジャー活動を通じて,市民による除去体制を構築すべく,取り組みを進めている.今後は,他河川等において本手法の適用事例を増やし,様々な状況やナガエツルノゲイトウ等の他の外来種への適用を検討することが望まれる.

著者関連情報
© 2022 応用生態工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top