応用生態工学
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レポート
宮城県仙台市におけるハヤブサの人工巣利用事例:センサーカメラによる有効性の検証
海原 要野口 泰司清水 信一由井 正敏
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2021 年 24 巻 2 号 p. 347-354

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抄録

新仙台火力発電所(宮城県仙台市)のリプレース工事における環境影響評価の結果を受けて,旧煙突に営巣する小型猛禽類ハヤブサへの環境保全措置として新煙突に人工巣を設置した.設置した人工巣の大きさは横幅 80 cm×奥行 55 cm×高さ 50 cm,設置位置は旧煙突の営巣時の高さを参考に 76 m とした.2015 年 10 月に人工巣を設置したところ,2016 年 8 月から利用が確認され,その後は 2017 年,2018年,2020 年及び 2021 年と 4 回繁殖し,そのうち 2017年,2020 年及び 2021 年の 3 回成功した.このことは,人工巣設置がハヤブサの保全措置として有効であることを示していると考えられた.

人工巣の利用状況はセンサーカメラを用いて観察を実施した.センサーカメラによって得られた情報として,人工巣への渡来日(時刻),交尾,成鳥による巣内育雛行動(抱卵,抱雛,給餌),餌の搬入(回数,時間),卵数,雛数,巣立ち日等が挙げられた.しかし,人工巣から約 6 m 離れた場所からの広角撮影で人工巣内部に撮影死角が存在したため,卵が確認できない場合もあったほか,運ばれた餌の判別,産卵の開始日や間隔,孵化日等の把握は困難であった.

センサーカメラによる調査は,電源や撮影容量,目的以外での作動等,いくつかの問題はあるものの,ハヤブサ人工巣での繁殖成功の確認は十分把握可能であり,比較的少ない費用で簡易的に実施できる方法として有効であると考えられる.

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