2023 年 26 巻 2 号 論文ID: 23-00008
池干しは,ため池の機能を維持するための管理手法として継続的に行われてきた.池底の還元的な状態を改善し,ため池の水質の維持やそれによる生物の生息環境の改善に一定の役割を果たしてきた.しかし,池干しの際のため池からの放流水は底泥を含むことから濁りを生じ,そのまま下流に放流されれば負荷になる.ここでは,8 年ぶりに池干しが行われたため池における流出水の水質の挙動をモニタリングした.ため池の池底が露出しても濁りの発生はなく,9 割程度露出した後に魚類採捕を実施した際の濁りが流出した.濁度が上昇した際の COD は一時 1,000 mg L-1,TN は 200 mg L-1,TP は 7 mg L-1を越えた.濁度の上昇が見られた 12 時間の COD 総負荷量は 284.4 kg,TN は 44.4 kg,TP は 1.5 kg であった.一方,NO3-N 濃度は池干し水位低下操作時に濁度上昇前から増加し,水位低下操作後も水位低下操作前に比べ高い状態を維持した.池干しによって池底の還元的な条件が緩和し,脱窒が抑制されたことが要因と考えられる.他方で,以前は生息した二枚貝が確認されなかった.8 年間池干しを行わなかったことによる池底の還元的条件の進行がその一因と推察された.