応用生態工学
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事例研究
稼働中の風力発電施設におけるクマタカの生息状況
一瀬 弘道青木 俊汰郎
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2025 年 27 巻 2 号 p. 87-96

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抄録

風力発電機 16 基の設置前,設置直後及び新規の風力発電機の更新前(既設風力発電機設置 18 年後)の各段階においてクマタカの現地調査を実施した.既設風力発電機の設置前はクマタカ 2 つがい,設置直後は 3 つがいが確認され,更新前の段階では 4 つがいの生息が確認された.更新前の調査では,4 つがいのうち 2 つがい(A,B つがい)で繁殖成功が確認された.他の 2 つがい(C,D つがい)については,ディスプレイや交尾,餌運び等が確認されながらも,繁殖成功は確認されなかったが,生息や繁殖活動が継続的に確認された.更新前の段階で確認されたつがいのうち,A つがいは営巣場所から 553 m,C つがいは 925 m の距離に既設風力発電機があり,A つがいでは繁殖成功も確認された.また,営巣中心域には,A つがいが 2 基,C つがいが 5 基の既設風力発電機を含んでいた.このことは,クマタカが風力発電機と共存しうる可能性を示唆した.

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