北米原産の外来魚であるコクチバスは,近年日本国内で分布を急激に拡大しており,侵入した河川における生態系への悪影響が懸念されている.そのため,侵入した河川において駆除が実施されているが根絶に成功した例はない.コクチバスは規模の大きい河川を選好することから,駆除を実施するにあたり,どこまで分布していて,個体数密度が高い場所はどこか明らかにすることは駆除をより効率的に進めるために必要である.そこで本研究では,三重県櫛田川において,環境 DNA を用いることで,櫛田川本川におけるコクチバスの流程分布と支川への侵入状況を明らかにした.環境 DNA 調査は夏季(2021 年 8 月 30-31 日,2022 年 9 月 12-13 日) と冬季(2021 年 1 月 27-28 日,2022 年 2 月 8-9 日)に計 4 回実施した.櫛田川本川では河口約 1 km から 40 km の範囲でコクチバスの環境 DNA が検出され,最上流検出地点は全ての調査で変化しなかった.最上流検出地点の上流には堰があることから,堰がコクチバスの分布拡大を制限している可能性が示唆された.比較的規模の大きい支派川では再生産している可能性が高く,規模の小さい支川においても夏季に環境 DNA が検出されたことから一時的ではあるが,侵入し ている可能性がある.よってコクチバスが河川に侵入した場合,支川も含めかなり広範囲に分散・定着することが示された.広範囲にわたる駆除はコストも大きく,根絶が困難である.そのため,外来種を水系に入れないこと,そして個体数が少ないタイミングで駆除をすることが河川における外来種管理において最も重要である.