応用生態工学
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河川の自然復元
目標景観
辻本 哲郎
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1999 年 2 巻 1 号 p. 7-14

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抄録
河川における水流,流砂,地形変化,植生繁茂の相互作用が河相をかたちつくっており,この河相で治水・利水機能ととともに生態系保全機能を確保してしていこうとするスタンスとしての河川景観管理を提案した.河相を記述する移動床水理,植生水理,生態環境保全機能評価を支援する生息環境水理の最近の発展が,こうした河川景観管理を支援することになる.河相と,それが河川に期待される様々な機能を担っている状態として定義する河川景観の変遷を,定量的に把握できれば,今日の河川の自然復元指向の目標も明確化されよう.
本文では,大規模インパクトについて,その時点でそれが無かったと想定した場合との河川景観の現時点での比較でその変質を認識し,それを回復することを大規模インパクトを実施したことに対する責任目標とする考え方を示した.
一方,洪水,低水の繰り返しとそれぞれの期間での植生の破壊と繁茂が河相変質に大きな役割を果たしていることを著者らの最近の研究から具体例を示すとともに,こうした素過程の抽出・解析とその総合によって水系の河相変遷も記述できるという展望を述べた.
近年の河相の変質を是正,自然を復元する大掛かりな取組み(人工洪水など)を含めた河川景観管理が,こうした河相の応答についての科学的認識をもとにした仮説に誘導されるadaptive managementの仕組みで行われようとしており,この枠組みの支援も重要である.
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