応用生態工学
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2 巻, 1 号
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  • 石川 忠晴
    1999 年 2 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
  • 目標景観
    辻本 哲郎
    1999 年 2 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    河川における水流,流砂,地形変化,植生繁茂の相互作用が河相をかたちつくっており,この河相で治水・利水機能ととともに生態系保全機能を確保してしていこうとするスタンスとしての河川景観管理を提案した.河相を記述する移動床水理,植生水理,生態環境保全機能評価を支援する生息環境水理の最近の発展が,こうした河川景観管理を支援することになる.河相と,それが河川に期待される様々な機能を担っている状態として定義する河川景観の変遷を,定量的に把握できれば,今日の河川の自然復元指向の目標も明確化されよう.
    本文では,大規模インパクトについて,その時点でそれが無かったと想定した場合との河川景観の現時点での比較でその変質を認識し,それを回復することを大規模インパクトを実施したことに対する責任目標とする考え方を示した.
    一方,洪水,低水の繰り返しとそれぞれの期間での植生の破壊と繁茂が河相変質に大きな役割を果たしていることを著者らの最近の研究から具体例を示すとともに,こうした素過程の抽出・解析とその総合によって水系の河相変遷も記述できるという展望を述べた.
    近年の河相の変質を是正,自然を復元する大掛かりな取組み(人工洪水など)を含めた河川景観管理が,こうした河相の応答についての科学的認識をもとにした仮説に誘導されるadaptive managementの仕組みで行われようとしており,この枠組みの支援も重要である.
  • 地域学としての提言
    市川 新
    1999 年 2 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    The author analyzes the various conditions concerning on the environmental planning of Japanese rivers and proposes the future research directions, based on these analyses. At first, from a morphological viewpoint, river planning should be based on longer time scales, especially on the engineering facilities, as being illustrated by several examples of dams. Secondary, any environmental river planning should be taken consideration as a part of the regional planning. And finally, the author claimed a river should be treated as a field of flowing regime, before consideration on biological preservation, by reviewing flow conditions, which are used to be decided by the traditional water usage right for irrigation purposes.
  • 土屋 十圀
    1999 年 2 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    最近,多自然型川づくりは実施事例も重ねて随分洗練されてきた.しかし,在来種の植生を使ったり,市街化以前の生息環境を目標とするなどよい方向にあるが,未だ,巨石を使いすぎたり,低水路部を固め強制的に蛇行させるといった事例も見られる.また,河川周辺環境を考慮せずエコデザインのコンセプトを曖昧のまま実施すると箱庭的な川づくりになることがある.したがって,河川の流域特性,背後地の環境などその地域のプリミティブな自然度,多様度を基本に考えないと工法だけに特化して過剰な手を加えることもある.自然復元,再自然化のもつその場所,その地域の意味付け,考え方を明確にする必要がある.
    また,多自然型工法は施工後の生態系の変化を長期的に観察し,各種工法を十分検証するまでには至っていない.多自然型の川づくりの適用に当たってはマニュアル化ができにくいために大河川と中小河川,農山村地域と都市域の違いなど川の個性や流域特性を十分考慮することが最も重要な観点であることを述べた.
    本報ではこれまでの河川生態系に関する文献,知見から河川生態系の撹乱と要因に関して整理した.その中で自然的な撹乱,人為的な撹乱の要因を示し,区分して見ることの重要性を示した.また,多自然型川づくりの個別の工法だけに目を奪われることなく流域全体からその手法の適用方法を考えることの重要性について矢作川,アメリカのキスミー川の事例を取り上げて解説した.
    更に,ヨシを保全している中小河川の複断面河道の水理模型実験による検討事例を取り上げた.低水河岸にヨシ帯のある場合,粗度係数の増加を伴い,最大で計画流量の約70%程度の流量しか流れないことを示した.
    従って,多自然型川づくりの今後の適用方法と課題はエコデザインとしての目標を明確化するとともに粗度係数の増加に伴う河川計画との調整の重要性に関して指摘し,考察した.
  • 玉井 信行
    1999 年 2 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    本論文では河川の自然復元を考える場合の,基線となる概念,用語,生息域の定量的評価法を中心に考察した.基礎概念としては今日的潜在自然植生に倣って,今日的潜在自然の概念を提案した.人間活動の影響をどう捉えるかの例として,日本の近代における産業・社会の発展が,技術史的には三段階に整理できることを示し,自然度の低下の特徴を潜在自然と関連付けて論じた.
    河川における生態環境を論ずる'とぎには,少なくとも,河川工学,地理学,植物生態学,動物生態学,緑地学などの専門家が集まり,学際的な議論をする必要がある.異なる学問分野においては,同一対象に関する用語が異なっていたり,異なる概念が使われていることがある.これらを統一したり,共通の認識を持たないと議論が成立しないことになる.こうした問題意識に基づき,用語についての問題提起を行った.
    最後に,河川の自然特性を,自然の攪乱,連続性,河床の多様性の三つにまとめ,この観点から将来の河川計画が備えるべき要件を論じた.さらに,この議論を定量的に進めることを可能にするための評価法の体系を論じ,二次的な評価法が積層的に組み合わさった開かれた体系が望ましいことを述べた.必要な二次的な評価法の例は,環境流量などを分析する水文評価法,流れの3次元シミュレーションなどの水理評価法,水理量と生息域適性曲線との関係を論ずる微視的あるいは巨視的生息域評価法,事業の費用・便益を論ずる経済的評価法,自然の不確定性と計画の水準を論ずる信頼性解析などである.詳細な内容については,参考文献を通して例示した.
  • 谷田 一三
    1999 年 2 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    河川の自然復元についての生態的視点として,河川における有機物,栄養塩,エネルギーの生態的循環(スパイラリング)を確保することが重要で,そのためには豊かな生物群集の保全が肝要であることを指摘した.また,上流と下流,周辺と河川,河床内間隙の亜表流水と表流水における連続性の確保が重要であることも指摘した.また,河川生態系における滞留時間を延ばす生物的な貯留装置として,底生動物群集,バイオフィルム(生物被膜),河川周辺植生,落葉堆積が重要な機能を持つことを示した.物理的な貯留装置としては,河川の周辺部に形成されるワンドやタマリが重要な働きを持つことを指摘した.回遊性魚類や遡上習性をもつ水生昆虫類は,下流,あるいは海洋から上流への栄養塩などの回帰に重要な役割を果たすことを概説した.
  • 島谷 幸宏
    1999 年 2 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    In this paper, 7 factors of river ecosystem are categorized from the view point of human impacts referring to Karr et al. (1986). The factors are 1) energy sauce ; 2) water quality ; 3) habitat quality ; 4) flow regime ; 5) sediment transport ; 6) biotic interaction ; and 7) human use.
    Based on the review of targets of conservation and restoration of river environment, I proposed that the target of river restoration is to restore the equilibrium dynamic system to keep the function of habitat quality.
  • 辻本 哲郎
    1999 年 2 巻 1 号 p. 51-52
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
  • 藤咲 雅明, 神宮 字寛, 水谷 正一, 後藤 章, 渡辺 俊介
    1999 年 2 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    栃木県中央部の平場水田地帯を流れる湧水を水源とする小河川「谷川」において,河川の環境構造と魚類の生息場所に関する調査を行った.
    環境要因の分析と立地特性との比較から,谷川は異なる環境構造を有する山際型区間,水田型区間,中間型区間の3つの河川区間に分類された.山際型区間はカバー構造,砂礫底被覆率,アブラハヤの採捕個体数が他の区間に比べ有意に大きく,水田型区間では湿生・抽水植物,沈水植物被覆率,ドジョウ・ホトケドジョウの採捕個体数が他の区間に比べ有意に大きい結果を得た.
    環境要因と採捕個体数の関係の分析から,灌漑期はドジョウ・ホトケドジョウと沈水植物被覆率に正の相関関係を確認した.非灌漑期は,ヤマメ・アブラハヤと倒流木,ホトケドジョウと沈水植物被覆率,フナ類・ドジョウと湿生・抽水植物,ドジョウと接続水路数,それぞれに正の相関関係を確認した.
    水田型区間の有する湿生・抽水植物や沈水植物被覆率および,山際型区間の有するカバー構造や砂礫底被覆率といった環境要因が形成する区間特性と,魚類の生息条件(採餌・退避・産卵・仔稚魚の成育)を対応させると,スナヤツメ・フナ類・ドジョウ・ホトケドジョウは水田型区間を主生息場し,ヤマメ・ウグイ・アブラハヤは山際型区間を主生息場としていることが示唆された.
    谷川は,涸れることのない流量や安定した水温,良好な水質および,異なる河川区間の存在により,遊泳魚と底生魚といった相異なる生活様式を持つ魚類の成育,繁殖を保証する環境構造を有していると評価できる.
  • 傳田 正利, 萱場 祐一, 島谷 幸宏
    1999 年 2 巻 1 号 p. 63-72
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    千曲川中流域の後背水域を対象に詳細な地形図を用いた簡便な冠水頻度算定方法の提言と検証,水位上昇に伴う後背水域の冠水形態についての考察を行った.
    今回提言した手法により,各後背水域の地形的な特徴と水位上昇の程度により冠水形態が異なること,そして,冠水頻度は冠水形態によって異なること,が明らかになった.特に,出水時流路による冠水形態は現象が三次元的であり,得られた冠水頻度は,河道断面における地形と水面の比高差といった二次元的な情報のみから算定した結果と大きく異なることが明らかになった.今後,後背水域への冠水を考える場合には,河道内地形を三次元的に捉えることが必要である.
  • 浅枝 隆
    1999 年 2 巻 1 号 p. 73-74
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
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