抄録
本文では,水産工学のうち,水産土木が海岸生態系保全に果たす役割を考察した.まず,水産土木は海域環境制御技術であること,その制御対象が非生物的環境要因のうちの物理的因子であることを示した.水産土木の役割は環境制御によって生息地の保全,修復と創造を行うことである.
次に,生物と物理化学的環境の関係を明らかにする方法として環境評価の手法を示した.生物にとって海岸における主要な物理的環境因子である波は流れとして取り扱える.流れが生物に与える影響について,振動流水槽実験により直接調べた例を示し,結果の適用にあたっての留意点を論じた.構造物によって環境を制御する場合,副作用(予定しない影響)のあることを指摘した.構造物の主要な材料であるコンクリートは工夫によって生息場としての機能が高まることを示した.