応用生態工学
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長良川河口堰におけるモクズガニEriocheir japonica (de Haan)の溯上量分析に基づく魚道の評価
竹門 康弘
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2000 年 3 巻 2 号 p. 153-168

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抄録
長良川河口堰に設置されている4本の魚道(左岸呼び水式魚道,左岸ロック式魚道,左岸呼び水式魚道,右岸せせらぎ魚道)について,モクズガニEriocheir japonica(de Haan)の利用実態を,建設省中部地方建設局・水資源開発公団が1995年から5年間実施したミニトラップ調査の資料を用いて分析した.その結果,モクズガニの未成体に関しては,せせらぎ魚道が最も多くの個体を溯上させており,溯上個体中の未成体の割合や,下流の捕獲数に対する溯上率も高いことがわかった.いっぽう,モクズガニの成体に関しては,呼び水式魚道がロック式やせせらぎ魚道よりも多く溯上し,かつ溯上率も高かった.これに対して,ロック式魚道は,未成体・成体ともに溯上個体数のみならず溯上率も低かった.
また,1995年から5年間の捕獲数の変動を分析した結果,モクズガニの未成体は1997年以後の方が多く溯上しており,河口堰の運用以後の比較においては溯上数の減少傾向は認められなかった.いっぽう,河口から46km地点と57km地点における登り落ち漁の資料を分析した結果,両地点のモクズガニ捕獲数はこの5年間で減少した.とくに未成体の捕獲数については年次間の差は有意であった.これらの結果から,モクズガニ個体群に対する河口堰の影響として,堰による溯上障害はとくにせせらぎ魚道の働きによって軽減されているものの,湛水域において何らかの死亡要因が働き個体数の減少をもたらしていると考えられた.さらに,魚道が成体の配偶場所として働く可能性や,メガロバ幼生が着底する場所や時期などの生活史に与える河口堰の影響について考察した.
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