北海道南西部,貫気別川流域内の土地利用が異なる2つの小流域(森林河川:森林率98%,畑地河川:畑地率48%)において,河床砂礫構成の違いが底生動物の生息環境と個体数・出現分類群に与える影響について検討した.1998年6月から11月まで2河川の河床に底質サンプラーを設置し,1ヶ月ごとに回収して粒径階別砂礫重量を測定した.総採集砂礫量は,大雨出水の集中した期間のみ森林河川で多くなったが,それ以外の期間では畑地河川で多くなる傾向があり,特に粒径0.1~1mmの細砂量の割合が高くなった.また,畑地河川で採集された底生動物の個体数は,森林河川に比べ10~20%ときわめて少なかった.8月と11月の各採集地点の水深,流速,礫重量,粗砂重量,細砂重量,CPOM量,FPOM量を環境変量として,採集地点と分類群,環境変量との関係をCCAを用いて解析したところ,いずれの月も採集地点は河川ごとに明瞭に分かれ,畑地河川の採集地点は細砂量が最も説明力が強い環境変量であることが示された.また森林河川にのみ明らかに多く出現した分類群は,細砂以外の環境変量の卓越する位置にプロットされたのに対し,2河川で共通して多く採集された分類群は,細砂の卓越する位置にプロットされた.結果として,底質サンプラー内に形成された環境とそこで採集された底生動物は,各河川の生息環境と底生動物群集の特徴を反映したものであることが示唆された.
今回調査対象とした畑地河川では,台地上の農地開発に起因するガリー状の斜面崩壊が非常に多いため,崩壊地から河道に供給された大量の土砂が河床れきの隙間を充填してはまり石状の底質を形成してきたと考えられる.河川生物の生息環境を改善するには,治山対策により崩壊地からの土砂生産防止を図るとともに,崩壊の発生そのものを予防するための措置として,営農方法の改善や土地利用規制など,土地利用に踏み込んだ対策が重要である。
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