抄録
福島県阿武隈川水系大滝根川に建設された三春ダム貯水池末端部を対象に,試験湛水開始時から試験湛水終了1年後の計3ヶ年,河川植生の変化を追跡した.ここでは,ダムの貯水池末端部における堆砂と冠水による植生への影響についての観察および考察を行った.冠水と堆砂に伴う攪乱の結果,クズ群落やススキ群落,ヨモギ群落等の草地植生が減少し,代わりに河川特有のヤナギ群落の増加および自然裸地やオギ群落の形成とカナムグラ群落等の一年生草本植生の侵入が認められた.
その原因としては,試験湛水による冠水と堆砂および流水による攪乱が考えられた.特に,70日以上冠水していた範囲において広範囲の草地植生が枯死し,自然裸地が形成され,一年生草本植生が進入したと推察した.