応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
Print ISSN : 1344-3755
ISSN-L : 1344-3755
ダム下流域における河相変化が砂礫堆上の植物群落の分布に及ぼす影響
鎌田 磨人小島 桃太郎吉田 竜二浅井 孝介岡部 健士
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 5 巻 1 号 p. 103-114

詳細
抄録
多目的ダムの設置・供用は,様々な経路を通じて河道内の植物群落の空間配置に影響を及ぼす.本研究では,勝浦川の正木ダム下流域に生じている「粗粒化区間」における植物群落の分布と,当該区間の上・下流域の「自然区間」における植物群落の分布を比較し,粗粒化区間における植物群落の分布上の特徴を明らかにした.そして,両区間における群落の分布の違いをもたらした要因について,河床の物理的環境の違いから考察した.
粗粒化区間では,自然区間には分布していないアキグミ群落やトサシモツケ群落が分布していた.
アキグミ群落を特徴付けるアキグミは比高が1.3m~2m,平均粒径が270mm~450mmの範囲にある地点に出現し,トサシモツケ群落を特徴づけるトサシモツケは比高が1.6m~2.8m,平均粒径が240mm~520mmの範囲の地点で植被率が高く,カワラハンノキは比高2.5m~3m,平均粒径が270mm~380mmまでの地点に出現した.
自然区間では水際からの比高の増大とともに粒径が小さくなっており,アキグミ群落やトサシモツケ群落を構成する種の生育に適した立地は存在しなかった.一方,粗粒化区間においては,比高の大小に関わらず,州全域が粒径の大きな堆積物で覆われていた.それは,ダム建設による土砂供給量の減少に起因すると考えられた.
これらのことより,ダム堆砂によってダム下流域の砂礫堆で粗粒化が生じたことにより,同一比高でもより大きな礫環境を好む植物種が,ダム下流域の粗粒化区間で生育することが可能になったと考えられた.
著者関連情報
© 応用生態工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top