抄録
道路沿いの盛土法面に緑化木として植栽された鳥散布植物が,鳥散布植物の移住を促進させるかどうかについて検討した.結実季節の異なる鳥散布植物や風散布植物の樹冠下と緑化木が植栽されていない草地に散布される鳥散布種子や出現する鳥散布植物の構成を比較した,対象とした緑化木は,鳥散布植物として初夏に液果を着けるソメイヨシノ(9個体)と秋から冬にかけて液果を着けるナナカマド(10個体),風散布植物としてクロマツ(10個体)とした.一方,緑化木が植栽されていない対照区は,ススキ草地(10ヵ所)とした.鳥散布種子の調査は,各調査木の樹冠下とススキ草地の10ヵ所にシードトラップ(1.5m2,0.86mmメッシュ)を1個ずつ設置し,夏期(30日間)と秋冬期(150日間)に行った.また,植生調査は,各シードトラップに隣接して調査枠(lm2)を4個ずつ設置し,晩夏に行った.
シードトラップに捕捉された鳥散布種子の種数および個数は,ススキ草地よりも緑化木の樹冠下で有意に多かった.同じ緑化木であっても,クロマツの樹冠下よりもソメイヨシノとナナカマドの樹冠下で有意に多かった.緑化木の樹冠下に落下した鳥散布種子の結実季節は,その緑化木の結実季節と有意な重なりを示した.また,植生調査枠に出現した鳥散布植物についても,鳥散布種子の場合と同様な結果を示した,
したがって,鳥散布植物の緑化木は,特に,その緑化木と結実季節が重なる鳥散布植物の移住を促進させることが明らかになった.すなわち,緑化のために植栽された鳥散布植物は,鳥類にとって魅力的な植物であり,自然植生の復元を促進させる植生誘導木の役割を果たしていた.