抄録
浦山ダムの下流河川で,河床構成材料の粗粒化および生物の生息・生育環境の悪化を防止するため,貯水池上流端に堆積した土砂を堤体下流に投入する「土砂投入」を実施した.
土砂投入の生物に対する効果を検証するため,ウグイの産卵場を調査対象とし,ウグイが投入土砂を産卵場として利用するか,投入土砂にトレーサーとして糖晶質石灰岩を混入させ,調査した.
現地調査の結果,トレーサーの混入した河床でウグイの産卵が確認され,投入土砂が産卵場として利用されたことが証明された.
投入土砂以外でも産卵が確認されたが,自然の状態で産卵が確認されたのは1箇所のみであった.
確認された産卵場の状況から,洗い砂利の存在する平瀬の維持が,ウグイの産卵場の保全につながると考えられたが,浦山ダム下流は土砂の供給がないため,産卵場を維持するためには,今回実施したような土砂投入が有効な対策と考えられた.