抄録
近年,森林管理と土地利用政策が一体化した包括的な資源管理システムの構築が世界的な課題となっている.ニュージーランド(NZ)は自然林と人工林の役割を分化するとともに,資源管理法を策定し,いち早く包括的な資源管理システムを構築した.本稿では,多くの示唆に富むNZの資源管理システムの構築過程とその効果・問題点について概説する.また,我が国の森林管理システムとの比較も行う.
NZは自然林を環境保全に人工林を木材生産に,とその役割を分化させた管理を行っている.このような管理が可能になったのは,(1)自然林の多くが既に伐採され,急斜面に残存するのみであること,(2)人工林による林業が盛んであること,(3)森林管理の効率化と環境保護活動の圧力の存在,が背景として挙げられる.そのため,森林の分布状況や林業の現況が大きく異なる我が国では,このような森林管理方針を導入するのは難しいと思われる.しかし,森林管理に携わる行政機関や関連法規の役割を明確化させることは有益と思われる.
資源管理法は,中央省庁・地方自治体の改革そして環境に関する法規の統合という過程を伴って制定された.資源管理法は各省庁間や各法律間の矛盾や対立をなくし,包括的な資源管理を可能にする素地を提供したといえる.我が国では包括的な資源管理を実践するために,法律を付け加えることで対処してきたが,NZのように管理省庁や法律を徹底的に見直し,一貫性のあるシステムを構築することが必要と思われる.