抄録
マレーシアのピナン川流域において,人間活動による土地利用形態の変化は,特に下流域の河川水質を悪化させつつある.本研究では,ピナン川流域における土地利用変化を明らかにした上で,それが河川の水質に与えた影響を評価した,1992年,1996年,および2000年の土地利用の被覆状況をランドサットの画像データから地図化し,その経年変化をGISを用いて把握した.そして,4つの小流域および全流域を対象に経時観測されている水質データ,およびそれをもとに算出される指標値(DOE-WQI)の経年変化を土地利用変化とあわせて検討した.なお,DOE-WQIは,マレーシア環境省によって採用されているものである.
森林や低木林の面積は経年的に急速に減少する一方,都市面積(人工造成地)が増加していること,そして,景観が分断化されてきていることが判明した.小流域および全流域のDOE-WQIの値は,それぞれの流域に含まれる森林面積と正の相関を,都市面積と負の相関を持っていた.このようなことから,流域の土地利用計画や開発計画に,リモートセンシングやGIS技術を用いることが有効であることが確認、された.