応用生態工学
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市街地における移入種タイワンリスの生息分布と林分環境
田村 典子宮本 麻子美ノ谷 憲久高嶋 紀子
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2004 年 6 巻 2 号 p. 211-218

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抄録

神奈川県の市街地に点在する林分100カ所において,移入種であるタイワンリスの生息の有無を調査し,その林分の環境特性との関わりをロジスティック回帰モデルによって解析した.環境変数として,林分の面積,近接する林分間の距離,リスが生息する5ha以上の林分との距離,林分に占める常緑広葉樹の割合,針葉樹の割合,落葉広葉樹の割合,その他の植生割合,林分周囲が宅地で占められる割合,田畑で占められる割合,道路で占められる割合,その他の土地利用で占められる割合の11変数を検討した.その結果,林分面積がもっとも影響の大きい変数であった.距離に関わる変数は生息への影響が有意ではなかった.常緑広葉樹の割合,周囲を田畑が占める割合がそれぞれ生息に正の関係を示し,宅地の割合が負の関係を示した.林分面積を変数として入れ,互いに相関関係のない変数,周囲が田畑の割合と常緑広葉樹の割合を加えたモデルを立てたところ,予測確率は0.45となった.タイワンリスがこれまで神奈川県で分布を拡大してきた背景には,上記の環境変数にあげられた林分面積が比較的大きく,常緑広葉樹の割合が高く,閑静な環境であったことによると考えられる.今後の分布拡大の傾向を予測するためには,こうした環境がどのように分布しているのかランドスケープレベルでの検討が必要である。

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