教育社会学研究
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青森県出身者の社会関係資本と地域間移動の関係
石黒 格
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2018 年 102 巻 p. 33-55

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抄録

 進学,就業において非常に厳しい制約下にある青森県の若者の現状を,進学,就業の実態と社会関係資本の利用という観点から検討した。筆者らが独自に行った3つの調査データの分析から,以下の結果を得た。1)青森県では,威信の高い大学に入学する機会が強く制約されているが,中堅以下の大学への入学機会への制約は弱い。2)そのため,学力の高い若者に対して,選択的に移動の誘因が存在する。3)青森県在住の若者は,南関東在住の若者と比べて労働時間は等しく,勤続年数は長いが,収入は低い。4)青森県在住の若者の社会関係は地域的で,そのために時間が経過しても残存しやすい。5)青森県在住の若者にとって,社会関係が就業機会獲得の重要な経路となっており,特に低学歴の若者でこの傾向が強い。以上の結果および先行研究から,青森県では,学力および経済的に有利な立場にいる若者には大都市へと移動する誘因が存在するのに対して,相対的に不利な立場にいる若者にはそうした誘因は小さく,むしろ豊かでサポーティブな社会関係が出身地に留まる誘因となっていることが示唆された。こうした誘因の二重構造は,相対的に有利な若者が,より多くの利益を得る構造を有しており,格差の再生産装置と評価しうる。しかし一方で,大都市に移動する利益の小さい,資源の乏しい若者を地域に包摂し,移行における不確実性のリスクから保護する機能を果たしているとも理解できる。

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© 2018 日本教育社会学会
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