教育社会学研究
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特集
「アジア」という視点から見る教育
──特集にあたって──
片山 悠樹中村 高康
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2021 年 108 巻 p. 7-17

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抄録

 アジアへの研究関心が高まりつつあるなか,日本の教育社会学はアジアの教育に対してどのように向き合えばよいのだろうか。欧米との比較を通して発展してきた日本の教育社会学は,アジアとの関係のなかで自らの課題や立ち位置を問い直す時期に差しかかっているのはないか。本稿の目的は,各論稿の要約を行ない,アジアから教育を見る可能性を提示することである。
 論文の要約を通じて,次の2つの視点が浮かび上がった。
 ひとつ目は,対象との距離感である。欧米との比較で浮上する異質性は,歴史的文脈や社会的価値・規範の違いから,目につきやすいかたちとなりやすいが,アジアという類似性の高い社会との比較では,異質性は目につきにくい可能性がある。そうした微妙な異質性に対してセンシティブになるためには,それぞれの研究者が「類似性」をいかに設定するのかという対象との距離感は重要となると思われる。
 ふたつ目は,理論との距離感である。理論の多くは欧米の現実から生れたものであり,欧米の理論を無自覚に内面化することには注意しなければならない。アジア社会の現実を欧米とは異なる視座で適切に理解する作業は欠かせず,そのためにも欧米産の理論に対していっそう自覚的になる必要があろう。

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