教育社会学研究
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論稿
マイノリティに非排除的な学校への変容
―制度と学校文化の視角から―
二羽 泰子
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2015 年 97 巻 p. 25-45

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抄録

 本稿の目的は,制度的にも文化的にも障害児に対して排除的といわれる日本の学校組織が,市全体として非排除的なものへと変容を遂げた日本のある都市での調査を元に,学校組織が非排除的に変革させられるまでの変容のあり方を明らかにすることである。Mintzberg(1979)の組織の構形を用いて,調査都市における学校組織の変容過程を,制度及び学校文化の視角から分析することによって,非排除的な学校組織がどのように形成・持続されてきたのかを考察した。
 その結果,学校組織の外面で担っていた障害児の選別が機能しなくなった事態に対処するために,障害児の選別を行わないような制度へと変更され,その制度変更が結果的に学校組織の内部の変容をも促進させることにつながったことが分かった。また,市全体の「教員文化」や「生徒文化」の変容によって,学校組織内に,教員のみで形成されるアドホクラシーにとどまらず,生徒や親も巻き込んだハイパーアドホクラシーの構形が現れ,非排除的な学校を実現していたことが明らかになった。さらに,選別されることなく就学する多様な子どもたちに対処するために,子ども中心に問題解決を志向する新たな代替規格が「プロフェッショナル官僚制」の学校組織に組み込まれ,「アドホクラシー」や,ハイパーアドホクラシーの形への変容を容易にする,相互補完的な学校組織内部の構形が形成されていた。

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© 2015 日本教育社会学会
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