教育社会学研究
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論稿
中学生の学校適応メカニズムの実証的検討
―学級と部活動に着目して―
林川 友貴
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2015 年 97 巻 p. 5-24

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抄録

 本稿の目的は,学級と部活動という二つの所属集団に着目して,中学生の学校適応のメカニズムを明らかにすることである。学校ランクという「学校間」の差異に関する変数の学校適応に対する説明力が高校段階と比べて大きく減退する中学校段階においては,「学校内」の複数の文脈の影響をより精密に捉えうる分析枠組みが求められる。そこで本稿では,「学校内」の下位集団である学級と部活動の影響に照準を合わせ,中学生の学校適応メカニズムを検討した。
 分析に際しては,複数の文脈の影響を同時的に分析できるcross-classified multilevel モデルを用いて,中学二年生を対象とした調査データを分析し,中学生の学校適応に対して学級と部活動という二つの所属集団が与える影響を推定した。
 主な知見は次の三点である。(1)生徒間の交流が分断され,疎外性の高い学級に所属する生徒ほど学校適応は低くなる。(2)所属する部の全体的な積極性や,運動部での先輩-後輩関係の良好さは学校適応と正の関連をもつ。(3)疎外性の高い学級に所属する生徒ほど,部活動での先輩- 後輩関係が学校適応に与える影響は大きい。
 これらの結果は,同年齢集団である学級と異年齢集団である部活動の双方の影響を考慮した分析が,中学校段階の学校適応の説明において必要であることを示唆するものである。

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© 2015 日本教育社会学会
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