抄録
近年,南極氷床の氷が減りはじめ,地球の平均海水位の上昇に寄与していることが明らかになってきた。この氷床流出の加速を引き起こすきっかけとなったのは,南極海の変化である可能性が高い。日本は,この変化の兆候が捉えられつつもこれまでほとんど実態が明らかになっていない東南極トッテン氷河とそれを取り巻く海洋の重点的な現場観測を開始した。砕氷船「しらせ」や搭載ヘリコプターを用いた観測により,海底深度の全体的な分布と深い氷河谷のつながりを明らかにし,海洋下層には外洋から「暖かい」海水の流入があることを見出した。南極氷床が地球環境に与えるインパクトを把握するため,今後とも日本も各国と連携して南極気候変動の課題解明に貢献する必要がある。