2010 年 68 巻 2 号 p. 104-109
「日本人の食事摂取基準」は健康な個人または集団を対象としている。しかし,身体に障害を持つ人に必要なエネルギー及び栄養素の量を明らかにするための十分な研究が不足しているため,障害者支援施設においても食事摂取基準を活用して栄養計画がたてられている。本研究では,障害者支援施設に入所する外傷性脊髄損傷の男性6名(平均年齢54.0±9.5歳)を対象に,食事調査と身体状況調査を実施した。すべての対象者のエネルギー摂取量は,施設において算出された推定エネルギー必要量を下回ったが,たんぱく質摂取量はほとんどの対象者が推定平均必要量を満たしていた。そして,いくつかの微量栄養素摂取量は推定平均必要量を下回るか,目安量,目標量に満たなかった。対象者は,低いBMIと高い体脂肪率を持ったが低栄養と認められる者はいなかった。健康な人のための食事摂取基準が身体に障害を持つ人に適用できるかどうかは疑問があり,今後これらを明らかにするためにはさらなる調査,研究が積み重ねられていく必要があると考えられる。
(オンラインのみ掲載)