栄養学雑誌
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68 巻, 2 号
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報文
  • 宮崎 由子
    2010 年 68 巻 2 号 p. 65-77
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    摂食行動障害者の早期発見を行うために,393人の女子高校生および382人の女子大学生を対象に,健康状態,心理的特性および食習慣状況について調査した。その結果,(1)高校生より大学生の方が,摂食行動障害傾向者が多かった。(2)大学生より高校生の方がやせている者(BMI<18.5)および月経異常者が多かった。(3)心理的特性と食習慣状況では同じ傾向を示した。
    食習慣状況では,20%の学生は朝食を欠食し,そのうちの60%の学生は朝食を摂らずに間食で補っていることが判明した。また,女子学生の多くは計画的な食生活をしていないので,食教育を受ける必要性がある。
    次に,思春期女性を食事行動様式に従って,4グループ(健常者を含む)に分類した。大学生の摂食行動障害傾向者の割合は,44.5%(過食傾向者37.9%,拒食傾向者0.3%,両方の傾向者6.3%)で,高校生の摂食行動障害傾向者の割合は27.0%(21.9%,0.1%,5.0%)であった。拒食傾向者を除く3グループのBMI値は同じ傾向を示した(BMI=19~20)ので,外観や体型からでは健常者グループと摂食行動障害傾向者グループを判別することは出来ないことが分かった。また,幼児期の食物アレルギーが拒食傾向者に関与していることも分かった。
    4グループにおける心理的特性について因子分析した結果を,次のようにまとめた。(1)拒食傾向タイプ;やせ願望・体型不満・良い子意識,(2)過食傾向タイプ;やせ願望・自己否定・過食,(3)拒過食傾向タイプ;やせ願望・自己否定,体型不満,過食。
    摂食行動障害傾向者では,自尊心とうつ状態に強い正の相関関係を示した(r=0.7)。過食傾向者と拒過食両傾向者の約60%の者が月経異常者であった。反対に拒食傾向者は無月経症状を示した。さらに,自己否定者数と月経正常者数に負の相関関係を示した(r=-0.8)。
    (オンラインのみ掲載)
  • 北野 直子, 江藤 ひろみ, 北野 隆雄
    2010 年 68 巻 2 号 p. 78-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    著者らは,熊本県の一地域に居住する70歳以上の男女高齢者399名を対象に,食生活と歯の状態を含む健康に関するアンケート調査を行った。まず,対象者の世帯構成を3つのタイプ(単身世帯,夫婦のみ世帯,複数世帯)に分けて解析を行った。単身世帯の者は夫婦のみ世帯や複数世帯の者に比べたんぱく質源となる肉・魚類,大豆製品の摂取が少なかった。単身世帯高齢者に対する低栄養予防のための栄養教育のプログラムが必要であると考える。さらに,対象者を残存歯数により3群:無し(残存する歯が無い),少数(残存歯数1~19本),普通(残存歯数20本以上)に分けて解析を行った。残存歯数が普通の者は,無しあるいは少数の者に比べ食べることや睡眠は良好で,また活動的で積極的な日常生活を送っていた。以上のことから高齢者のQOLの維持には家族形態や歯の状態が影響することが明らかになった。地域での高齢者の生活支援には歯科保健プログラムも続けることが重要と考える。
    (オンラインのみ掲載)
  • 玉浦 有紀, 赤松 利恵, 武見 ゆかり
    2010 年 68 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,体重管理における誘惑場面の対策を評価するための,対策尺度を作成することを目的とした。
    方法:本研究の対象者は,自己記入無記名式の質問紙調査に協力を同意した994名であった。調査では,誘惑場面における対策頻度,誘惑場面における対策の行動変容ステージ,体重管理の知識,誘惑場面におけるセルフエフィカシー,現体重に対する認識,属性についてたずねた。分析では,対策の項目選定,探索的因子分析,信頼性(クロンバックα係数)の検討,確証的因子分析,妥当性の検討を行った。
    結果:解析対象者は752名だった(男性518名,女性210名,不明24名)。誘惑場面の対策として,「行動置換」11項目,「食べ方」12項目,「刺激統制」5項目,「ソーシャルサポート」4項目,「認知的対処」12項目の5尺度(計44項目)が作成された。各尺度の内的整合性(クロンバックα係数)は0.68~0.87であった。TTMの行動変容ステージが高い,あるいは,体重管理の知識が「ある」と回答した者ほど,対策尺度得点は高かった。
    考察:体重管理を行っている者において,5つの新しい対策尺度の妥当性と信頼性が確認された。本研究は横断的な調査であるため,今後は,体重管理の誘惑場面における対策とセルフエフィカシーの関係について,縦断的に検討を行う必要がある。
    (オンラインのみ掲載)
研究ノート
  • 村井 陽子, 奥田 豊子
    2010 年 68 巻 2 号 p. 95-103
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    家庭での豆利用促進に必要な知見を得るため,家庭における豆摂取に関する調査を行った。大阪市内の小学校2校で,全保護者を対象として,質問紙調査を実施した。解析対象の401名の回答者を,豆を料理する頻度によって3グループに分けると,豆を料理する頻度が高い程,豆の認知度,嗜好,栄養的認識,家庭における豆と豆製品の摂取頻度,夕食の調理頻度,献立計画,食意識の高さでより望ましい特性が示された。回答者の約22%は豆料理を作らず,その主な理由として「調理した惣菜の豆を利用」「作っても家族が食べない」「豆の調理方法がわからない」「準備が面倒」を選択した。重回帰分析の結果,豆を料理する頻度,豆の栄養的認識,食意識の高さが,豆摂取と有意に関連していることが明らかになった。この調査は,簡単でおいしい豆料理のより良い情報と豆の栄養価に関する教育の重要性を示唆している。
    (オンラインのみ掲載)
  • 金谷 由希, 石田 裕美
    2010 年 68 巻 2 号 p. 104-109
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    「日本人の食事摂取基準」は健康な個人または集団を対象としている。しかし,身体に障害を持つ人に必要なエネルギー及び栄養素の量を明らかにするための十分な研究が不足しているため,障害者支援施設においても食事摂取基準を活用して栄養計画がたてられている。本研究では,障害者支援施設に入所する外傷性脊髄損傷の男性6名(平均年齢54.0±9.5歳)を対象に,食事調査と身体状況調査を実施した。すべての対象者のエネルギー摂取量は,施設において算出された推定エネルギー必要量を下回ったが,たんぱく質摂取量はほとんどの対象者が推定平均必要量を満たしていた。そして,いくつかの微量栄養素摂取量は推定平均必要量を下回るか,目安量,目標量に満たなかった。対象者は,低いBMIと高い体脂肪率を持ったが低栄養と認められる者はいなかった。健康な人のための食事摂取基準が身体に障害を持つ人に適用できるかどうかは疑問があり,今後これらを明らかにするためにはさらなる調査,研究が積み重ねられていく必要があると考えられる。
    (オンラインのみ掲載)
  • 佐藤 真実, 谷 洋子, 清水 瑠美子
    2010 年 68 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    現在,嚥下障害をもった施設高齢者の食事は基準化されたものがない。そこで,私たちは福井県内の高齢者施設における嚥下食の食事の種類とその内容について調査を実施し,嚥下食を「噛む力」と「飲み込む力」の組合せによって分類を行なった。本研究では,嚥下障害をもつ高齢者の食事の基準化について検討し,統一化にむけた基礎資料を作成することを目的とした。嚥下食の食種は41種類があげられた。中でも多くの施設が使用する嚥下食の呼称は,「キザミ食」であり34施設が使用していた。1施設しか使用しない食種は,27種類もあった。嚥下食の種類とその内容は,施設によって異なり,明確に区分されていなかった。しかし,「噛む力」と「飲み込む力」の組合せで分類すると高齢者施設における嚥下食は,概ね最低3種類に分類された。その3種類としては,食事の対象者が噛む力がある場合にはキザミ食,噛む力および飲み込む力がやや低下している場合にはゾル状調製食,噛む力および飲み込む力が低下している場合にはゲル状調製食である。これらの3種類の食事を基準化すれば各施設で対応できるのではないかと提案したい。
    (オンラインのみ掲載)
  • 峯岸 夕紀子, 志渡 晃一
    2010 年 68 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    北海道内に勤務する栄養士を対象に,勤務実態の把握と勤務継続意志の関連要因について調査した.143名にアンケート調査を行い,118名から回答を得た.結果,勤務継続意志あり群は全体の58%を占め,その特徴として「職場の雰囲気は友好的である」「上司は頼りになる」「上司はよく仕事を知っている」があり,さらに「仕事に満足している」「うつ傾向が低い」であった.以上のことから,勤務継続意志は職業性ストレスや上司満足などの要因と多面的に関連していることが示唆された.
    (オンラインのみ掲載)
  • 開元 多恵, 板東 絹恵, 渋谷 まゆみ
    2010 年 68 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    ウィスター系雄ラットをオリエンタル製MF粉末食で飼育し,9週齢,26週齢,66週齢から,各20%カゼイン含有ビタミンB6無添加食( B6(-)食)を14日間,その後,ビタミンB6を添加した食餌( ピリドキシン塩酸 2.9 mg/kg diet)( B6(+)食)を14日間与え,実験1,2,3とした。各実験開始前には,MF粉末食からB6(+)食に10日以上馴化させ,実験開始直前である0日と実験28日間の24時間尿を集め,尿中4-ピリドキシン酸(PiA)とキサンツレン酸(XA)排泄量を調べた。
    PiA排泄量(nmol/g diet)はB6(-)食を与えて,1-3日目に有意な減少を,XA排泄量(μmol/g diet)は2-6日目に有意な増加を示した。B6(-)食からB6(+)食に切り替えた時,実験1,2,3のすべてにおいて,PiAは14日以内に実験開始前の0日のレベルにまで回復した。一方,XAは実験1,2,3で異なる動態を示し,実験1は,B6(+)食に切り替えて2日目以降,0日のレベルよりも有意に低下し,14日目まで低下したままの状態を保った。また,実験2ではB6(+)食に切り替えて14日目でも回復しなかったが,実験3では4日目に回復した。
    3回の実験で同じ日に採尿できた,0,1,14,15,18,28日の6点について実験1,2,3の3群間でPiA,XAの比較をした。その結果,PiA排泄量は6点すべてについて9-12週齢のラットは66-69週齢の時期に比べ低値を,XAは28日を除く5点で,9-12週齢のラットは26-29週齢,66-69週齢の時期に比べ高値を示し,加齢がPiA,XA排泄量に影響することが認められた。
    (オンラインのみ掲載)
資料
  • 宅見 央子, 中村 弘康, 白石 浩荘, 米谷 俊
    2010 年 68 巻 2 号 p. 131-140
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,咀嚼能力が異なることによって,高齢者の菓子の選択や,菓子の食感(かたさや付着性)に違いが出るかどうかを調べることである。我々は,週に3回以上菓子を食べる60-80代の男性90名と女性94名を対象に,インターネットにより調査を実施した。調査対象者には,(1)歯の状態,(2)咀嚼能力,(3)菓子の選択,および(4)好ましい食感に関して質問した。咀嚼能力により調査対象者を4群に分け,χ2検定およびコクラン・アーミテージ検定にて解析した。
    咀嚼能力と年齢や歯の状態には関連性が見られた。咀嚼機能の低下した群ほど食感(かたさや付着性)を気にしている人が多かった。咀嚼能力の低い群ほど菓子の中で比較的かたい米菓やかりんとうを日常的に摂取している人が少なく,やわらかい食感を求めていた。
    咀嚼能力にかかわらず,口腔内で付着しにくく,口どけの良い食感が求められており,この傾向は,特に咀嚼能力の低い群に強く見られた。
    以上より,咀嚼能力と菓子の選択や菓子の食感に対する要望には関連性が見られた。咀嚼機能の低下した高齢者には,やわらかく,口腔内に付着しにくい食感が好ましいことが示唆された。
    (オンラインのみ掲載)
  • 小島 彩子, 佐藤 陽子, 橋本 洋子, 中西 朋子, 梅垣 敬三
    2010 年 68 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    最近の野菜の栄養価が低下しているという情報が流されている。こうした情報は,単に日本標準食品成分表(食品成分表)の収載値を引用して比較しているが,食品成分表では改訂ごとに分析方法が変更されていることは考慮されていない。このような情報における分析方法の関与について検証する目的で,ビタミンC(VC)に焦点をあて,9種類の野菜のVCを,これまで食品成分表で使用された3つの分析方法,すなわち滴定法(I),比色法(II),HPLC法(III)を用いて比較した。ホウレンソウ,コマツナ,ニンジンのVC含量はI>II>IIIのように明確に年代順に低下した。この実測値の変動は,食品成分表におけるVC収載値の変動とよく一致していた。トウガンのVC含量は食品成分表収載値の変動と同様に方法IIによる実測値が他法よりも高かった。いくつかの野菜では,食品成分表におけるVC収載値の変動が分析方法だけでは説明できなかったものの,全体としては,実測値の変動は食品成分表の収載値の変動とよく一致していた。以上の結果より,過去の食品成分表のVC収載値の変動に対して,分析方法の違いがある程度は影響したことが示唆された。
    (オンラインのみ掲載)
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