栄養学雑誌
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短報
健常成人における亜鉛栄養状態評価指標としてのACE活性比の検討
─長野県1地域の健康診査受診者における検討─
猿倉 薫子
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2011 年 69 巻 5 号 p. 261-266

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抄録

【目的】亜鉛欠乏によって味覚障害や成長障害等を引き起こすことが知られている。一般的な指標となっている血清亜鉛値は,生体内で恒常性機構が働いていることなどから,亜鉛摂取量とは単純に相関しないため,その他の指標と総合的に評価することが望まれている。本研究では,健常人における亜鉛栄養状態を,血清亜鉛値とACE活性比から検討することを目的とした。
【方法】研究Iでは,亜鉛欠乏食で飼育された亜鉛欠乏状態のラットにより,亜鉛栄養状態を,血清亜鉛濃度とACE活性比から検討した。5週齢のラット20匹(亜鉛欠乏群)とコントロール食を与えた5匹(コントロール群)の2群に分けた。その亜鉛欠乏群をさらに,欠乏2週,欠乏3週,欠乏4週までの3群に分け,それぞれの期間,亜鉛欠乏食で飼育後,血清亜鉛濃度とACE活性を測定し,ACE活性比を算出した。次に,研究IIにおいて,健康な男女22名の食事調査と,採血を行い,血清亜鉛濃度,ACE活性を測定し,ACE活性比を算出した。
【結果】亜鉛欠乏食で飼育したラットでは,血清亜鉛濃度は有意に低下し,ACE活性比は有意に増加した。また,健康な男女においても血清亜鉛濃度を 75 μg/dl を境界に低値群と高値群に分けたところ,ACE活性比に有意な関連がみられた。
【結論】従来一般に使用されている亜鉛栄養状態の指標である血清亜鉛濃度以外に,ACE活性比が健常人の測定にも適用できる可能性が示唆された。

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© 2011 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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