栄養学雑誌
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69 巻 , 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 菅原 歩美, 曽根 博仁
    2011 年 69 巻 5 号 p. 205-213
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】わが国では,2005年にメタボリックシンドローム(MetS)の診断基準が発表され,2008年には,その診断基準に基づいた特定健康診査・特定保健指導が開始している。しかし,現在のMetS診断基準は国際的にも統一されておらず,日本の基準は,腹囲,血糖値,血清脂質値で他の診断基準と異なっており,さまざまな大規模臨床研究にて基準値の検証が行われている。日本におけるMetSの有病率は,どの診断基準を採用するかによって異なるが,日本の基準を用いた国民健康・栄養調査では男性27%,女性12%と報告されている。また,MetSにすでに強い心血管疾患発症リスクを有する2型糖尿病患者を含めるかや,腹囲を必須項目にすることによって非肥満者で他のリスクを有する者を見落とすのではないか,などと,MetSの定義そのものに対しても議論の余地は大きい。今後のさらなるエビデンス集積の動向に着目したい。
  • 渡邊 智子
    2011 年 69 巻 5 号 p. 214-228
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】食品成分表の策定及び活用のための研究を行った。策定に関する研究は,1.穀類((1)飯,かゆ,おもゆの栄養価,(2)無洗米の栄養価及び精白米との相違,(3)炊飯器による飯の成分残存率及び嗜好の相違,(4)飯の水分量),2.廃棄部位と廃棄率,3.調理器具の相違が焼き魚の成分損失に与える影響),4.肉類((1)市販肉類の皮下脂肪及び筋肉間脂肪割合,(2)肉類のモデル試料による成分残存率),5.四訂成分表及びフォローアップ成分表のデータの活用((1)調理による成分残存率,(2)成分値の推定),6.漬物の塩分量,7.栄養士・管理栄養士の成分表作成への要望である。
    活用に関する研究は,1.液状食品の 100 ml 成分表,2.調理による成分変化を考慮した栄養価計算のための成分表の作成,3.調理による成分残存率,4.区分別の調理した食品の成分残存率及び調理食品が未収載の食品の成分値,5.未収載成分の推定((1)脂肪酸とトランス型脂肪酸,(2)糖質),6.食事指導及び栄養教育((1)魚類,肉類,果実類及び野菜類のエネルギー及び重量別評価,(2)しょ糖,(3)アルコール飲料,(4)外食料理,(5)硝酸イオン,(6)ヨウ素)である。
    策定に関する研究結果は,成分表の基礎データとして活用され,活用に関する研究結果は,実摂取栄養量に近似した栄養評価および栄養教育に活用されている。精度の高い栄養管理には,成分表を読み,適切に活用することが望まれる。
原著
  • 今枝 奈保美, 後藤 千穂, 加藤 利枝子, 服部 奈美, 山本 和恵, 小田 敦子, 田中 秀吉, 藤原 奈佳子, 徳留 裕子, 徳留 信 ...
    2011 年 69 巻 5 号 p. 229-240
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】地域在住高齢者のビタミン摂取量分布を観察し,摂取量評価や栄養計画がまだ十分に実践されていないビタミン群(α-カロテン,β-カロテン,β-カロテン当量,クリプトキサンチン(以下Cry),葉酸,V.B6,V.B12,V.E,パントテン酸)と,従来から評価されてきたビタミン4種(V.A, V.B1, V.B2, V.C)との相関を観察し,栄養計画の効率化を検討する。
    【方法】健康な地域在住高齢者242人を対象に,隔日4日間の食事を調査し,ビタミン摂取量の分布,分布を正規化する変換係数,個人内分散と個人間分散の分散比を観察した。ビタミン間の関連はデータを正規化後,エネルギーを調整した偏相関係数で評価した。
    【結果】不足者割合が高かったのは,V.A, V.B1, V.B2, V.B6, V.Cであった。個人内/個人間の分散比はV.D,V.B12 で男女とも高値,V.K,葉酸,V.C,は男性で低値,V.B2 は男女とも低値であった。次にV.B2 の摂取量はV.B6,葉酸,パントテン酸の摂取量と相関が高く,V.CはV.K,V.B6,葉酸との相関が高かった。V.AとCryの相関は低かった。
    【結語】偏相関係数の観察から,4種のビタミンを増やすよう食事計画すると,β-カロテン,レチノール,V.K, V.B6,葉酸,パントテン酸の摂取増加が期待できるが,Cry, V.D, ナイアシン,V.B12 に関しては独立した食事計画が必要であることが示唆された。
  • 三成 由美, 大仁田 あずさ, 宮原 葉子, 徳井 教孝, 印南 敏
    2011 年 69 巻 5 号 p. 241-252
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】著者らは先に食物繊維 5 g 入りおからパンを試作し排便との関わりについて検討し,排便回数が増加することを報告した。本研究では,さらにそのおからパンの排便効果を高めるために中医学における便通改善効果のある黒胡麻を添加したパンに蜂蜜を添えたもの(以下試験食)を開発し,そのパンの摂取後の女子学生の排便状態に及ぼす影響について検討した。
    【方法】被験者の選定は,排便回数が3日に1回以下を便秘と定義して,本学女子学生57名を選定しランダムに2群に分けて実施した。調査は排便状況調査票と食物摂取頻度調査票を用い,自記入法で実施し,Mann-WhitneyのU検定,χ2 検定により解析した。
    【結果】試験食品摂取期間における食物摂取頻度調査の結果では,試験食品摂取群の 1,000 kcal当たりの総食物繊維摂取量の平均±標準偏差は,7.6±2.0 g/日であり,対照食品摂取群は 8.0±2.4g/日であった。試験食品摂取期間の2週間における排便回数の変化は試験食品摂取群 2.00[0.00~2.50]回,対照食品摂取群 0.00[-0.50~1.00]回であり,両群間に5%レベルで有意差が認められた。排便日数では対照食品摂取群の 0.00[-0.50~1.00]日に比べ,試験食品摂取群は 3.00[1.00~3.50]日であり高い数値を示し,1%レベルで有意差が認められた。
    【考察】以上の結果より,試験食の排便効果が認められ,試験食は健康増進および便秘改善に効果を示すものと推測した。
短報
  • 堀川 翔, 赤松 利恵, 堀口 逸子, 杉浦 淳吉, 丸井 英二
    2011 年 69 巻 5 号 p. 253-260
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】小学校で食の安全教育を幅広く行っている教職員の特徴を検討し,リスクの考え方が教えられているかを調べること。
    【方法】全国の学校栄養士,家庭科教諭,養護教諭の計3,225人に自己記入式質問紙調査を実施し,食の安全教育の実施内容,他の教職員との連携などをたずねた。食の安全教育の実施内容を回答項目数の中央値で2群に分け,他の項目とクロス集計及びχ2検定を行った。次に,単変量及び多変量ロジスティック回帰分析を行い,食の安全教育の実施内容の項目数が多い群(以下,食の安全教育の多い群)の関連を検討した。また,リスクの考え方を教えている人の職種の分布を調べた。
    【結果】有効回答数は800人(24.8%)であり,食の安全教育の多い群は398人(49.8%),少ない群は402人(50.3%)であった。多変量ロジスティック回帰分析の結果,食の安全教育の多い群には,家庭科教諭(学校栄養士に対するOR: 5.30, 95%CI: 3.17-8.85),他の教職員との連携(「していない」に対する「している」OR: 3.55, 95% CI: 1.59-7.92)などが関連していた。リスクの考え方を「少し教えている」「教えている」と回答した人は,全体の228人(28.5%)であった。
    【結論】食の安全教育の多い群の教職員は,家庭科教諭である,他職種との連携があることなどが示された。リスクの考え方を教えている割合は約3割であった。今後,小学校におけるリスクの考え方を含めた食の安全教育の方法を検討する必要がある。
  • 猿倉 薫子
    2011 年 69 巻 5 号 p. 261-266
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】亜鉛欠乏によって味覚障害や成長障害等を引き起こすことが知られている。一般的な指標となっている血清亜鉛値は,生体内で恒常性機構が働いていることなどから,亜鉛摂取量とは単純に相関しないため,その他の指標と総合的に評価することが望まれている。本研究では,健常人における亜鉛栄養状態を,血清亜鉛値とACE活性比から検討することを目的とした。
    【方法】研究Iでは,亜鉛欠乏食で飼育された亜鉛欠乏状態のラットにより,亜鉛栄養状態を,血清亜鉛濃度とACE活性比から検討した。5週齢のラット20匹(亜鉛欠乏群)とコントロール食を与えた5匹(コントロール群)の2群に分けた。その亜鉛欠乏群をさらに,欠乏2週,欠乏3週,欠乏4週までの3群に分け,それぞれの期間,亜鉛欠乏食で飼育後,血清亜鉛濃度とACE活性を測定し,ACE活性比を算出した。次に,研究IIにおいて,健康な男女22名の食事調査と,採血を行い,血清亜鉛濃度,ACE活性を測定し,ACE活性比を算出した。
    【結果】亜鉛欠乏食で飼育したラットでは,血清亜鉛濃度は有意に低下し,ACE活性比は有意に増加した。また,健康な男女においても血清亜鉛濃度を 75 μg/dl を境界に低値群と高値群に分けたところ,ACE活性比に有意な関連がみられた。
    【結論】従来一般に使用されている亜鉛栄養状態の指標である血清亜鉛濃度以外に,ACE活性比が健常人の測定にも適用できる可能性が示唆された。
資料
  • 山崎 優子, 端田 寛子, 志村 二三夫
    2011 年 69 巻 5 号 p. 267-279
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】ハーブサプリメント(HS)の安全・安心な利用の原点は,安全性・有効性の科学的根拠に基づく利用である。これに資するため,日本で人気の高いHS素材を調べ,その安全性・有効性の評価について日米間で比較・検討し,日本での利用状況,また情報源やその提供の問題点を探り,論考する。
    【方法】売上高上位20素材を年次別(2009年・1999年),国別(日米)にリストアップし,冊子体Natural Medicines Comprehensive Databaseの2010版(NMCD)による安全性・有効性の評価を点数化し,解析・検討した。
    【結果】同国間で人気のある素材は10年間を経ても大きな変化はなかった。日米で重複する素材は5~7品目あった。NMCD未収載品は,日本では両年3素材,米国では1999年に1素材あった。安全性評点には年次別・国別間に有意差はなかった。有効性評点は日米間の差が大きく,両年とも米国の評点が高く,日本のリストにはNMCDにより情報不足と評価されている素材が多かった。また,日米で重複のない素材は,重複する素材よりも全ての評点が有意に低かった。
    【結論】日本で人気の高いHS素材は,NMCDの評価によると米国よりも有効性の科学的根拠が低い。日本特有の素材はNMCDによる評価を受けていない素材が多く,日本では,適正な情報提供によらずにHS素材が利用されている可能性が示唆された。日本の現状に即したデータベース構築,アドバイザリースタッフ養成等を含め,レギュラトリーサイエンスの観点からの取組みが必要と考える。
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