抄録
【目的】市町村保健センターや市町村の保健福祉部局で臨地実習を行った学生の自己実現に向けた発達過程を質的に把握することを目的とした。
【方法】管理栄養士養成課程の臨地実習を履修した学生のうち,市町村保健センター等で実習を行った学生に課した実習報告書の総括記述で,学びや将来像を表現している文章をカテゴリー化した後,自己概念の理論的な枠組みとの関連性について分析を行った。
【結果】市町村保健センター等で臨地実習を行った学生26名の総括記述から10のカテゴリーを抽出した。そのうち6つのカテゴリーが自己概念の枠組みと対応を示した。学生は,地域保健事業の見学・体験や事前学習での取り組みを通して,モデル的人物像の確認できたこと,自己の現実的な評価ができたこと,人々のまなざしに映った自己が評価されていることを実感したことなどにより,自身の自己概念形成の萌芽が認められた。しかし,自己概念の枠組みとは異なる形で分類が必要なカテゴリーが4つあった。
【結論】臨地実習終了後の学生による総括記述の検討を行った結果,自己概念の枠組みに従った分類をすることができた。地域保健事業と連携した臨地実習を通して,学生が自己実現に向けて質的に発達したことが認められた。一方自己概念の枠組みとは異なった形で分類の必要なカテゴリーがあり,教育学における知見を援用する際の課題が示唆された。