栄養学雑誌
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70 巻 , 5 号
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総説
  • 鈴木 志保子
    2012 年 70 巻 5 号 p. 275-282
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル オープンアクセス
    スポーツや健康の維持・増進の現場における栄養管理は,栄養ケア・マネジメントと比較し,マネジメントの目的,期間,対象者,行動計画の有無,評価項目が異なることから,栄養ケア・マネジメントの流れのとおりに実施することができない。そこで,スポーツ栄養マネジメントを構築した。
    スポーツ栄養マネジメントは,目的と期間を定め,スクリーニングにより対象者を抽出し,対象者への個人サポート(個人マネジメント)を実施し,対象者全員の個人サポートの成果とともにマネジメントの評価を行うという流れである。個人サポートは,アセスメント,個人目標の設定,サポート計画立案,サポート計画の実施,モニタリング,個人評価の流れとなる。
    スポーツ栄養マネジメントは,2008年に北京で開催されたオリンピックにおいてソフトボール日本女子代表チームが金メダルに輝いたことから,質の高い効果的な栄養管理の実施が可能であることが評価され,スポーツや健康の維持・増進の現場における栄養管理システムとして導入されるようになった。
原著
  • 梅澤 敦子, 三輪 孝士, 渋井 絵里香, 並川 友美, 田中 徳子, 石川 みどり
    2012 年 70 巻 5 号 p. 283-293
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】北海道農村地域住民において,食材の入手経路の観点から総野菜摂取量と自家製野菜摂取量との関連について検討すること。
    【方法】北海道美深町に居住する30歳以上の成人を対象に春夏秋冬の4季節における平日2日間の食事調査(食事記録法)を行い,食材の入手手段(自家製,もらいもの,購入),食事内容を記録した。男女44名を解析対象とした。年平均の1日あたりの総野菜摂取量から野菜摂取高群と低群に分け,両群の食品群別摂取量を比較検討した。また,非農業従事者,農業従事者別の野菜摂取高群,低群の入手手段別野菜摂取量を比較検討した後,総野菜摂取量に寄与する因子を検討するため,非農業従事者,農業従事者別に重回帰分析を行った。
    【結果】総野菜摂取量の高群は緑黄色野菜,その他の野菜ともに低群に比べて有意に多く摂取していた。非農業従事者においては,野菜摂取高群では低群よりも自家製野菜を摂取している者が有意に多く,かつ,自家製野菜の摂取量が有意に多く,摂取割合も有意に高かった。農業従事者においてはほぼ全員が自家製野菜を摂取していたが,野菜摂取高群では低群に比べ,自家製野菜摂取量が有意に多かった。また,農業従事者群,非農業従事者群ともに総野菜摂取量に対して自家製野菜,もらいもの野菜摂取量が大きく寄与していることが示された。
    【結論】自家製野菜を摂取していることと総野菜摂取量が多いことの関連が示唆された。
  • 林 芙美, 武見 ゆかり, 西村 節子, 奥山 恵, 中村 正和
    2012 年 70 巻 5 号 p. 294-304
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】特定保健指導を受けた職域男性を対象に,初回面接直後の減量への取り組みに対する態度などについて質問紙法による調査(5項目)を実施し,6か月後の体重減少との関係を検討した。
    【方法】2010年4月から翌年3月にかけて,大阪府にある健診機関で特定保健指導の初回面接を受けた職域男性を対象とした。健診機関で把握された支援レベル,喫煙・飲酒習慣,行動変容のステージと6か月後の体重変化の関連を検討した。加えて,初回面接直後に質問紙法で把握した減量への取り組みに対する態度および周囲のサポートについて6か月後の体重変化との関連を検討した。
    【結果】解析対象160名の初回面接直後の減量への取り組みに対する態度に関する項目の回答分布は,「本気でやろうと思う」(やる気)60.0%,「(自分にとって必要で意味があると)強くそう思った」(重要性)50.6%,「自分の生活や仕事にとって重要」(価値づけ)68.1%であった。6か月後の体重減少と特定健診時の減量への行動変容のステージには関係がみられなかったが,初回面接直後に「価値づけ」が高まっていた者では体重減少が大きかった。
    【結論】特定健診時の行動変容のステージと減量成果は一致していなかったが,特定保健指導の初回面接直後の減量への取り組みに対する本人の価値づけと体重減少との関連性が示された。以上の結果より,初回面接時に対象者の減量への取り組みに対する態度を適切に捉え,それに応じた支援を行うことが重要であると示唆された。
  • 吉田 明日美, 髙田 和子, 別所 京子, 田口 素子, 辰田 和佳子, 戸谷 誠之, 樋口 満
    2012 年 70 巻 5 号 p. 305-315
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】女性スポーツ選手を対象に,二重標識水(DLW)法で測定した総エネルギー消費量(TEE)と,食事記録法より求めた総エネルギー摂取量(TEI)から算出したTEI評価誤差に対する種目や身体組成,食事摂取状況の関連を明らかにすることを目的とした。
    【方法】大学女性選手38名(陸上中長距離9名,水泳10名,新体操7名,ラクロス12名)を対象とした。体重補正済みTEE(cTEE)はDLW法で求めたTEEと調査期間中の体重変動から算出し,TEIは同期間に実施した食事記録法による食事調査から計算した。
    【結果】cTEEとTEIは,陸上 2,673±922 kcal/day,2,151±434 kcal/day,水泳 2,923±749 kcal/day,2,455±297 kcal/day,新体操 3,276±497 kcal/day,1,852±314 kcal/day,ラクロス 2,628±701 kcal/day,2,329±407 kcal/dayであった。TEI評価誤差は,陸上-13.6±24.1%,水泳-13.3±14.3%,新体操-42.0±15.3%,ラクロス-2.8±38.3%であり,種目間の比較では新体操が有意に過小評価していたが,身体組成や食事摂取状況には競技特性はみられず,同一種目間の個人差が大きかった。評価誤差の大小で2群に分けた高精度群(評価誤差-8.4±10.7%(値の範囲:-24.8%~+14.5%))は過小評価群(-40.9±8.8%(-56.3%~-28.7%))よりTEE,脂質エネルギー比率が有意に低値であり,菓子類摂取量,食事回数,炭水化物エネルギー比率が有意に高値であった。TEEが小さいことは高精度群への分類に独立して関連していた。
    【結論】女性選手の評価誤差には,TEEが独立して関連し,種目や食品群別摂取量,エネルギー比率,食事回数が関連する可能性が示された。今後は,対象種目の再検討や対象者数の増加とともに,心理的,社会的要因を含めた,評価誤差に関連する要因の検討が必要と考えた。
実践報告
  • 手嶋 哲子
    2012 年 70 巻 5 号 p. 316-323
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】市町村保健センターや市町村の保健福祉部局で臨地実習を行った学生の自己実現に向けた発達過程を質的に把握することを目的とした。
    【方法】管理栄養士養成課程の臨地実習を履修した学生のうち,市町村保健センター等で実習を行った学生に課した実習報告書の総括記述で,学びや将来像を表現している文章をカテゴリー化した後,自己概念の理論的な枠組みとの関連性について分析を行った。
    【結果】市町村保健センター等で臨地実習を行った学生26名の総括記述から10のカテゴリーを抽出した。そのうち6つのカテゴリーが自己概念の枠組みと対応を示した。学生は,地域保健事業の見学・体験や事前学習での取り組みを通して,モデル的人物像の確認できたこと,自己の現実的な評価ができたこと,人々のまなざしに映った自己が評価されていることを実感したことなどにより,自身の自己概念形成の萌芽が認められた。しかし,自己概念の枠組みとは異なる形で分類が必要なカテゴリーが4つあった。
    【結論】臨地実習終了後の学生による総括記述の検討を行った結果,自己概念の枠組みに従った分類をすることができた。地域保健事業と連携した臨地実習を通して,学生が自己実現に向けて質的に発達したことが認められた。一方自己概念の枠組みとは異なった形で分類の必要なカテゴリーがあり,教育学における知見を援用する際の課題が示唆された。
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