栄養学雑誌
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血液透析患者における血清セレン濃度とセレン摂取量
武政 睦子市川 和子
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2012 年 70 巻 6 号 p. 325-330

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抄録

【目的】血液透析(以下HD)患者の低栄養が問題となって久しい。その中でも,HD患者では血清セレン濃度が低く,血清セレン濃度が低いことが心血管系合併症の要因であること,死亡率,とくに感染症死亡のリスク要因になることが報告されている。今回,HD患者の血清セレン濃度およびセレン摂取量の現状把握を行った。
【方法】HD患者10名(男性4名,女性6名)を対象とした。年齢は,62.7±5.9歳,透析歴は,190±157ヵ月であった。4日間の食事調査,血液生化学検査および体格を調査した。
【結果】血清セレン濃度は12.7±2.4(9.0~17.3)μg/dlであり,セレン摂取量は51.1±14.3(31.6~70.8)μg/dayであった。血清セレン濃度と血清尿素窒素濃度,たんぱく質摂取量,セレン摂取量はいずれも有意な正の相関(r=0.804,0.697,0.660)が認められた。セレン摂取量とエネルギー摂取量,たんぱく質摂取量,リン摂取量,カリウム摂取量は有意な正の相関(r=0.766,0.740,0.672,0.674)が認められた。血清セレン濃度(μg/dl:Y)と標準体重当たりたんぱく質摂取量(g/標準体重kg/day:X1),セレン摂取量(μg/day:X2),カリウム摂取量(mg/day:X3)との間に重回帰式 Y=10.633X1+0.142X2-0.004X3+3.590(r=0.962,p=0.001)が得られた。
【結論】HD患者において,たんぱく質摂取量の低下がセレン摂取量の低下を引き起こし,血清セレン濃度の低下につながることが危惧される。

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© 2012 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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